第七話 心の内
言い争いから3日が経った。
あれから彼女とは顔を合わせることもなく、今後について考えていた。
実際傷つくことは怖い、そう思っているのも事実だ。
それでもみんなを守るためには傷ついてもいい、そう思っているのもまた事実だ。
自分の意見をつらぬき通すか、みんなの意見を尊重すべきか考えていると、
「西国のやつらが宣戦布告をしてきました。」
俺の部屋に偵察部隊の一人が告げに来た。
「攻め込んでくるのはいつだ?」
「4時間前後だと思われます。」
時間が足りない。
またあの作戦をするか。
新しい作戦を考える時間もない。
「また、ご自身をお傷つけになるのですか?」
不意に声が響いた。
声のする方を見ると彼女が立っていた。
「もし、前の作戦を実行するのであれば、私は絶対に参加しません。」
「あぁそうだよ認めるよ。俺は傷つくのが怖いよ。もし、新しい作戦があるのならそれをしたい、でも時間がないんだ。新しい作戦を練る時間も準備する時間もない。だったら、前の作戦をもう一度するしかないだろ。」
そう、時間がないんだ。
これなら参加してくれるだろ。
仕方のないことなんだから。
「だから、なんですか?」
「へ?」
予想していなかった答えに間抜けな声しか出せなかった。
「そんなこと関係ありません。4時間もあるんですよ。こんなに時間があるんです。それなのに考えることを放棄して、本当は新しい作戦なんて考える気がないんでしょ?」
「うるせぇ、一回黙れよ。俺に傷ついてほしくないとか勝手に言ってるけどよ、お前らの意見なんて実際どうでもいいんだよ。俺の在り方は俺が決める。口出しすんじゃねぇよ。」
こんなことしている間にも時間はどんどんなくなっていく。
これで彼女が引き下がってくれればいい。
「あなたは、考えたことがありますか?どうして私たちがここまであなたに対してものを言うのかを。どうしてあなたが傷ついてほしくないと思うのかを、一度か考えたことがありますか?」
「なんでって、それは・・・俺がお前らの国王だからだろ?」
そうとしか考えられない。
それ以外の理由なんてないと思っている。
「確かにそれもあっていますが、根本はそうではありません。私たちはあなたのことが大好きなんです。私たちのことを第一に考え、私たちと肩を並べ、たわいもない話で笑いあってくれるそんなあなたが私たちは大好きなんです。」
今この瞬間初めてこいつらと向き合えた、そんな気がした。
不意に目からしずくがこぼれた。
「俺のことが好きなのか?俺なんかのことを好きでいてくれるのか?」
「す、好きというのは異性としてとかそういう意味ではないので勘違いしないでください。」
初めてみんなの心の内を知れて救われ、それと同時にそれらを踏みにじってきた罪悪感に見舞われた。
こいつらが俺のことをそんな風に思ってくれているのならもう二度と自分の身を危険にさらすようなことはしない、そう誓った。
残り3時間。
新しい作戦を考えるために全員を自分の部屋に集めた。