第五話 決着
俺が今いる世界、そこに存在する魔法の中で有能なものなど何一つないんだ。
メリットがあればデメリットももちろんある。
今相手が使っているテレパシー。
もちろんこれにもデメリットはある。
一見相手の考えを読み取れる優秀な魔法に見える。
正確には相手の目に映るものの考えを問答無用で読み取ってしまう魔法。
つまりこの作戦の肝は・・・
「おーい早く呼んでくれよ。こっちだって暇じゃねぇんだ。」
そこで相手は違和感に気づく。
周囲から近づいてくる大量の羽音に。
「おい、お前何をした?」
初めて敵の顔が引きつった。
動揺している証拠だ。
「テレパシー使っているならわかるだろ?」
「頭の中にわけのわからねぇ声が響きまくってるんだよ。なんだよこれぇ。」
やはり敵は知らなかったようだ。
本気で苦しんでいる、いい気味だ。
「今俺の後ろにある壁、これ実はフェイク。」
俺の合図と同時に後ろの壁が大量の虫へと変化した。
「お前も知っているだろ?サイカムシ。自分で考えて行動する一番頭のいい虫だ。お前は俺の考えと同時にこいつらの考えも読み取っていたということだ。そんでもって、来たぜ。」
大量の羽音、その正体は壁へと変化していたサイカムシとはまた別のサイカムシ。
「こいつらとはシンパシーでつながっている。森での第1フェーズで先に謝っておいたんだ。森が壊されるけどすべては攻めてくる奴らのせいだって。そして、俺の合図と同時にやり返してやれってね。」
相手の周りにおよそ600匹はいるだろう、大量のサイカムシが覆い尽くしだした。
相手の視界には俺がうつっていない。
ほかの仲間ともシンパシーでつながっている。
仕上げに入るとしよう。
「さらばだ。生まれ変わってももう二度と俺の前に出てくるな。」
合図でサイカムシを離れさせる。
それと同時に四方八方から大量の弓、槍、剣が飛んでくる。
相手の体にすべて突き刺さる。
ピクリとも動かなくなったのを確認してこの戦いは幕を閉じた。
「誰も死んでないよな?」
「はい、王が身を挺してくれたおかげで・・・。」
空気が重たい。
何か言っている気がするが、ぼそぼそとしか聞こえない。
「あ、あれ?」
急に視界が暗転した。