第四話 心理
「逆手に取るとは?」
「そのままの意味だよ。人間の心理では勝利を確信した瞬間が一番油断するんだ。だから・・・」
この作戦は本当に危険だ・・・俺の命が。
もし、勝ったとしてもみんなは許してくれるだろうか。
「ちわー、この城もらいに来ましたー。」
見ればわかる嫌いな奴やん。
外見、声、すべてが俺の心を侮辱しているように感じる。
こいつが敵国の王か。
「この瞬間を待っていた。決着をつけよう。」
敵のナイフが俺の目に向かって一直線に飛んできた。
左手で防いだため激痛が走った。
血がしたたり落ちて今にも泣きそうだ。
それでも対抗しなければならない。
手に刺さったナイフをつかみ、相手の動きを封じてこっちも刺しに行く。
ただ、相手のほうが早かった。
背をそらしてナイフをよけ、そのままみぞおちにドロップキック。
それでもあきらめるわけにはいかない。
全力でとびかかって刺しに行こうとする。
それもすべて読まれていた。
敵は体を回転させ俺のナイフをよけた。
「お前テレパシー使っているだろ。」
「へー知らないと思っていたのに、意外だなー。」
テレパシー、一部の上級魔術師しか使えない魔法。
つまり敵にはそいつがいるんだ。
もしくは・・・
「そのもしくはなんだよなー。俺が世に言う上級魔術師っていうやつなんだよ。」
「そ、それじゃあ。」
「筒抜けだぜぇ。お前らの作戦すべてなぁ。」
なすすべなし。
俺の考えはすべて知られてしまう。
「さて、そんなお前に生きるチャンスをやろう。潜伏させているお前の仲間を全員ここに呼べ。俺らの会話は聞こえてないからお前が何らかの合図送れば来るだろ?そいつらを俺に殺させればお前の命だけは助けてやる。」
「理由がわからない。なぜ俺を助ける。」
俺の言葉に奴は奇妙な笑みを浮かべた。
「理由なんて特にないさ。俺の心もそこまで腐ってはいないだけだよ。それにほら、お前って博識みたいじゃん?」
理由なんてない、というよりは殺しても殺さなくても変わらない。そんな感じだろう。
「わかった。お前の言うとおりにするよ。呼べばいいんだろ?」
敵の笑みがより深まった。
そんな油断が命取りになるとも知らずに。