第三話 作戦決行
彼の話をしなくてはならない。
現国王、名は成美奏多。
2001年 6月23日生まれの高校1年生。
物心ついたときから周りの人間に不信感を持ち孤立。
そんな奏多の態度を気に食わないやつらからのいじめ。
その後関わるだけ時間の無駄、そう感じて家から出なくなった。
彼の唯一の楽しみは家で一人ゲームすること。
その中で彼は大切な人を守る主人公の姿にあこがれを抱く。
しかし、捨ててしまった世界に彼の戻る場所などなかった。
大きな矛盾、彼は絶望の淵に立っていた。
それに覆いかぶさるかのように大切な人が病で亡くなった。
今、彼の心のよりどころは突如転移したこの世界しかないのだ。
この世界を失えば彼の心は崩壊してしまうだろう。
「国王目標地点まであと30秒。」
「そろそろ第一部隊。準備に入って。」
20人程度の集まりが動き出した。
「敵が目標地点に到着。」
「爆撃開始!!」
作戦第1、爆撃。
俺らの陣地は林があって、渓谷に橋がかかっていてその奥にある。
力のない奴らが真っ向から戦ったところで勝ち目はない。
ならば地形を最大限に活用するしかない。
あらかじめ木々に火薬を設置。
敵が通ると同時に起爆。
「敵部隊の3分の1が壊滅したと思われます。」
想像以上の結果だった。
「その後の敵の動きは?」
「それが、残りの敵の姿が見えません。」
そこでふと違和感を感じた。林の中には道は1本しかなくそこに火薬を張り巡らした。
損害が3分の1程度で済むだろうか。
その刹那城が揺れた。
「まずい、敵は潜伏魔法を使っていたみたいです。」
潜伏魔法は地中に潜りその中を移動する魔法。
つまり地上での爆撃のダメージを一切受けてない。
「精鋭部隊、俺についてこい。残りも作戦通りに。」
魔法の種類はすべて覚えた。
だからこの魔法の存在も知っていた。
その時用の作戦もしっかり伝えてある。
「敵は俺たちを弱いと思っている。さらに、潜伏魔法の欠点も加えると不意打ちが1番強い。奴らの考えを逆手に取るんだ。」