最終話 国王・要
「左側の道路の舗装の手が止まってますよ。早くしないと日が暮れてしまいます。」
アイシャの大きな声が響き渡る。
「アイシャさんもそろそろ休んでください。こんなに毎日動いていていずれ倒れてしまいますよ。
リットが優しく声をかける。
国王、要が作り上げた世界。
それは敵対していた国すべてとの和解。
また、それぞれの国をすべて統合して一つの国とする。
ただ、戦争の記憶は消さず、アイシャを国王代理とする。
リットをアイシャの補佐として残りの人間をまとめ、まずはそれぞれの城をつなぐ道路を作る。
一つにした国を4つのエリアに区分し、それぞれで異なる作物や道具をつくり交流を盛んに。
しっかりした法律をつくり、もめ事をしっかり取り締まることで平和の世界を作る。
「あの人が残してくれたんですもの。毎日しっかり働かないと無駄になってしまいます。」
「要さんが眠ったままもう半年ですか。」
要は今も国王の部屋で眠ったままである。
体がやせ細るような兆しも見えず、まるで時が止まったかのようにただただ眠っている。
「アイシャさん、アイシャさん。聞いてますか?」
「あ、すみません。何でしょうか?」
「もうすぐ国王会議ですよ。みなさんを待たせては大変ですのでもう行きましょう。」
「はい、、、。そうですね。」
・・・やはり要さんの話になると表情が曇る。
それほどあの人の存在はアイシャさんにとって大きすぎたのか。
会議中もアイシャはぼーっとする様子が目立った。
「おーいアイシャー。聞いてる?」
「あ、ジークさん。すみません。」
するとリットが大きくいきを吐いて
「きっと働きすぎたんでしょう。今日はもう部屋に戻ってください。残りの話はこっちでつけておきますので。」
「は、はい、、、。すみません。」
そう言ってアイシャは会議室を出る。
なんか今日は謝ってばっかだなとリットは思った。
「いいんですか?体調がすぐれないとはいえ国王代理がいないのはさすがにまずいと思うのですが。」
ローランの言うことはもっともだ。
他の国王からもざわめきが起きる。
「彼女はこの世界ができてから無理をしすぎた。そろそろ休ませないと本当に体がもたないと思います。」
それから多少の不安を抱えながら今後についての話し合いが進んだ。
一応滞りなく進み最後の法律についての話し合いの時に突然ジークが立ち上がった。
それに続いてローラン、アーサーも立ち上がる。
「3人とも、どうかなさいましたか?」
「まさか・・・。」
それだけ言ってジークたちは部屋を飛び出した。
数分前、会議室を出たアイシャは要が眠る部屋へと行った。
「要さん、入りますね。」
アイシャはこの世界が作られてから毎日要に近況報告をしていた。
今日あったことを淡々と話していると次第に目から涙がこぼれてきた。
「や、やっぱり私にはあなたの代わりなんて、、、到底勤まるものではありませんでした。きっと誰もが思っているでしょう。もう、心が持ちません。お願いします、要さん。戻ってきてください。」
今まで願ってはいたが口にすることはなかった。
弱音を吐いたことすらなかった。
簡単には弱音を吐かないやつだと信じていたから。
だからこそこの瞬間を願い事とした。
「そっか、いままでよく頑張ったな。」
「か、要さん。要さんが目を、、、。」
その先は言葉にならなかった。
嗚咽をこぼしてひたすらに泣きじゃくるアイシャを見ていると突然ドアが勢いよく開いた。
「要!」
それは懐かしく優しい相棒の声。
「ジーク、ただいま。また会えたね。」
「あぁ、お帰り、要。この瞬間をどれだけ待ちわびたか。」
廊下が次第に騒がしくなる。
俺が目を覚ましたと喜びの声がそこら中から上がる。
そして、アイシャが涙を拭いて笑顔で
「おはようございます、要さん。」
初めてこの世界で目覚めたときと同じ状況。
だが、今回は前とは違う。
「おはようアイシャ。この世界はまだ修正する箇所がたくさんある。手伝ってくれ。」
「はい。」
この世界が本当に平和になってみんなが平和ボケし始めた。
だが、脅威はだんだん近づいていた。




