第十六話 最終決戦 決着
あれは、最終決戦の二日前だったかな。
夜中にトイレがしたくなって向かっていたとき外から微かに声が聞こえた。
窓を開けるとアイシャが剣技の練習をしていた。
しばらく見ているとふと、アイシャが
「ダメ、このままじゃ。大好きな要さんの役に立つには、まだ。」
その言葉を聞いたときドクン、と俺の心臓がはねた。
あの時はその理由がわからなかった。
だが、今横たわっているアイシャを見て、その理由がはっきりとわかった。
俺、ずっとアイシャのことが好きだったんだな。
だからこそこんなにも悲しみを感じ、怒りが湧き上がってくる。
ローランの仕組みを暴かれたときはさすがに焦ったが、冷静になって考えればローランを守っている結晶を砕く術は向こうにはない。
つまりまだ、こっちの優勢には変わりない。
「もう死んだ女なんて忘れて最後の戦いをしようや。」
そう言った瞬間要の体から大量の闇が放出された。
近づくことすらできない。
まともに見ることすらできない。
だが、このままでは自動的に要の体は壊れる。
俺の勝ちだ、そう思ったのはほんの一瞬だった。
闇を全部放出したのか要は空中から落ちてきた。
このまま首を切れば終わる。
大きく振りかぶって
血がまき散らされた。
北国王の腕が切り飛ばされたから。
何が起きたのか理解できない。
唯一要本人を除いて。
「ごめんな、アイシャ。俺が不甲斐ないばかりに、お前をこんな目に合わせてしまって。」
それからそっと口づけして
「今仇をとるからな。待ってろ。」
振り返ると血相を変えた北国王が何か言いたそうに立っていた。
「どうした?聞きたいことがあるなら聞けよ。」
「なぜ、俺に傷を与えれる。ローランはどうしたんだ。」
「簡単に言えば未熟だった俺が壁を超えたから。」
意味が分からないという顔をしている。
だが仕方ない。
それが真実なんだから。
「終わりにしよう。竜装。」
「そんなの俺の禁魔法で・・・。」
だが何も起きない。
「これがバルムンクの真髄。バルムンクは竜殺しの剣と言われていた。そして、その命の力を吸収しているとそう思い込んでいた。だが、実際は違った。竜を殺すのではない。竜から力を譲渡されるそういう剣なんだ。だからバルムンクの本当の姿は・・・。」
そういうと要をまとっていた鎧とバルムンク自身に亀裂が入り、砕け、
「真っ黒な死の色じゃなく、命の白色なんだ。」
雲で覆われていた戦場には眩しすぎるほどの純白な白竜が出現し、要の鎧となった。
「今の俺にはあらゆる魔法の効果を受け付けない。決着をつけよう。」
俺の一言に敵の顔に怒りと焦りが混ざったような表情が浮かんだ。
「だ、だが、それでは俺の体に傷をつけれった理由にはならない。」
「別にあの水晶は今の俺にとってはガラスとほとんど同レベルだ。竜の力をあまりなめるなよ。」
「く、くそがーーーーー。」
北国王が正面突進してきた。
あまりに浅はかで、そして
「遅い。」
北国王の体が斜めに切られた。
「ダークマター。これで、終わりだな。」
長く、つらく、悲しい戦いが決着した。




