第十話 vs西国 中編
自分のことで必死なはずなのに仲間の悲鳴が心に響く。
これが最善策、わかっていたはずなのにいざその時になると胸が張り裂けそうだ。
集中力が切れそうだ。
「くそ、このままじゃじり貧だな。」
「国王、横から来てます。気を付けてください。」
リット君には悪いがせっかくの作戦を続ける力は誰にもなかった。
それはリット君自身も同様だった。
そのとき
「逃げて、国王。」
ふいにアイシャの声が響いた。
アイシャは俺がこの世界で目覚め、激しい言い争いをした一番付き合いの長い人物だ。
その刹那後頭部に鋭い痛みが走った。
全く気付かなかったがすぐ後ろに敵が近づいていたみたいだ。
「だめだ、意識が・・・」
世界が暗転した。
もう痛みも何も感じない。
「どうなって、ん?あ、あーー。声は出るし、聞こえる。」
「へー、こんなところに人間か。てことはお前死にかけたんだな。」
少し幼い印象の声が聞こえた。
声のほうを見ると暗闇の中に少年が立っている。
見覚えがあるような気がしたがおそらく気のせいだろう。
「ここはどこだ?俺はどうしてこんなところにいる?みんなはどうなった?」
「まあまあ、そう慌てるなよ。」
悠長に答えてきた少年に若干の憤りを感じているとふいに少年の手が光りだした。
「ほら、こっちに来てみなよ。」
近づくと少年は水晶を握っていた。
除くとアイシャやリットが写っていた。
しかし、彼らは全く動いていなかった。
「気づいたか?ここは異空間。正確には向こうの時がこっちの千分の一の速さになっているだけなんだけどね。」
「で、俺をこんなところに連れてきてどういうつもりだ?」
「いやいや、単なる交渉だよ。さっきも言ったようにお前は死にかけた。致命傷を負った。だから生き返らせてやろうと思ってね。ただ、人を生き返らせるのはこっちにとってもリスクがあるんだよ。」
そう言うや否や急に視界が開けた。
「これは、コロシアム?」
「正解、今からここで俺と1対1の決闘をしてもらう。勝ったら生き返らせてあげる。」
気づかなかったが装備はそのままついていたらしい。
「わかった。勝負だ。」
「よーし、ジーク。がんばるぞー。」
その名前を聞いたとたん全身が震えた。
ジーク、正確にはジークフリード。
かつてこの世界を治めていた三聖剣のうちの一本、バルムンクを初めて使いこなした偉人。




