表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

第6話 隊長の大ファン(ザ・ファン)

ライブ当日、早めに来て、会場をひととおり見て回っている。


すると、インカムから〈AIユニット(かのじょ)〉の声がした。


『こちら〈モルモット小隊(GP)00(オー)〉。

モルモット小隊(GP)01(ワン)〉聞こえますか?』


「こちら〈モルモット小隊(GP)01(ワン)〉」


『前に来たときは“顔パス”だったんだけど……。

 さすがにもう、そういうワケにもいかないよね?』


「大人しくしていろ。

 いまどこにいる?」


『関係者通用口の近く。

 外套マント着て、仮面つき(かおはかくしてる)

 安心して』


その姿で行くしかないだろう、ということになったのだが。


それはそれで目立ちそうだな……。


でも、まあ、白衣よりはマシか。


そう思いながら、〈俺〉はいう。


「そこを動くな。

 すぐ行く」


「了解、〈隊長《GP01》〉!

 でも、めんどくさいのー」


周囲は派手で奇抜な格好ファッションをしている芸能人タレントや芸能関係者が多い。


そのせいか、少し離れた場所にたたずんでいた〈二脚にきゃく〉の〈AIユニット(GP00)〉は、割と周囲にけ込んでいた。


さすがに、チラチラと視線を送る者もなくはなかったが。


「よし行こう」


〈俺〉は、〈二脚にきゃく〉の双眼デュアル・カメラアイ目配めくばせしながらいう。


「了解、〈隊長チーフ〉!」


〈俺〉は、いま出てきたばかりの関係者通用口の前に立つ。


警備員に出演関係者用の入場許可証パスを見せながら、〈AIユニット(かのじょ)〉も通そうとする。


「ちょっと待て!

 キミ、入場許可証パスは!?」


どうやら、この警備員は会場側の人間(スタッフ)らしい。


“我々の情報”を持っていないようだ。


「いや。

AIユニット(かのじょ)〉には、入場許可証パスは必要ないハズだが……。

 上長じょうちょうに問い合わせてみてくれないか?

 “私”が我が社の大事なタレントを連れて来た、と」


〈俺〉は軍が特殊任務でよく使う、ダミー企業の名称が記載された名刺とIDをわたす。


肩書きは“技術研究開発営業部 統括主任”。


〈俺〉本人、いったいどんな技術を持ち、何を研究し、どんな開発し、いかほど販売して、何人のチームを率いているのかサッパリせないのだが……。


いちど、名刺これをつくった誰かに聞いてみたいものだ。


けっきょく、〈俺〉は何をする部署の所属なんだ!?


「でも、とりあえず……。

 仮面マスクは取ってください。

 そういうの困るんだよ」


警備員はスキャナにIDをかざして、〈俺〉の顔を見る。


怪訝けげんそうな顔をしながらも、小型無線機で連絡を取りはじめた。


「ええ。

 男性は問題なしです。

 でも、事前に申請されていない仮面の“少女”がいっしょで。

 それで『“彼女”には入場許可証パスはいらないハズだ』などと、妙なことをいってて……。

 このままで?

 はあ。

 では、待ちます」


警備員は眉間みけんにシワを寄せながら、面倒めんどうくさそうに腕時計をチラリと見ながらいった。


「アンタたち、ちょっと待ってて」


〈俺〉はうなずく。


せっかく、あと少しで交代の時間だったのに余計な仕事を増やしてしまったのかもしれない。


そのとき、小型無線機の呼び出し音が鳴った。


それに出た、警備員の口調が変わった。


「はい。

 えっ!?

 本社の?

 本部長ですかっ!!

 はい。

 ええ。

 まちがいありません。

 男性の方は、入場許可証パス・IDを確認しております。

 でも、“少女”は……。

 えっ、少女じゃない?!

 はい……。

 はい。

 わかりました。

 丁重ていちょうにですね。

 こ、心得ました。

 無礼ぶれいのないように……。

 はい、必ず、はい。

 失礼します」


片付かたづいたようだな。


「もう、いいかな?」


「し、失礼しました。

 その……。

 中には、危険な人物もいるもので……。

 先日も、油断するなとたっしが……。

 どうぞお通りください!」


警備員は〈俺〉に、IDを両手で返却しつつ……。


背筋せすじ指先ゆびさきばし敬礼けいれいしそうないきおいでいった。


「でも、人間ヒトじゃないなんて……」


〈俺〉たちが通り過ぎた後、ぼそっとつぶやきながら〈二脚にきゃく〉の身体ボディを見つめている。


「おい?」


「はい?」


「何もしてないよな?」


「なんのこと?」


「おいおい……」


「警備員さんのうーんと上の方の上司エラーイヒト……。

 本社の本部長さんて、元陸軍《りくぐんOB》だったみたいよ。

 きっと、〈隊長チーフ〉の大ファンだったんでしょ(笑)」


「カンベンしてくれ……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ