表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

第4話 基礎動作習熟訓練その2(レッスン・ツー)

今度は〈俺〉も〈AIユニット(かのじょ)〉と同じ部屋へ入った。


女先生ドクター〉もいっしょだ。


「どんな具合?」


女先生ドクター〉が〈若手男性医師サージョン〉にたずねる。


「どうもこうも。

AIユニット(かのじょ)〉が《《自分で》》動かしたいというので……。

 もう大変ですよ。

 サポートシステムを使えば、《《思うだけで》》自由自在だっていうのに……」


「どういうことなの?」


「だってー」


「だって?」


「ちゃんと動かないんだもーん。

 わたしが思ってるのと、ワンテンポもツーテンポも遅れるの……。

 あり得ないでしょ?」」


「どうなの?」


「それは……。

 まあ、事実でしょう。

 サポートシステムは〈AIユニット(かのじょ)〉の意思。

『前に歩く』なら『前に歩く』を受けてから。

 最適な動作を選択し、命令を組み合わせて……。

 身体ボディを可動させます。

 その処理には、ある程度の時間が必要だということです」


「でしょ。

 やっぱり!」


勝ちほこったように言葉をはさんだ〈AIユニット(かのじょ)〉。


それを〈若手男性医師サージョン〉の声がさえぎった


「でも、ちょっと待ってください。

 おそらく〈AIユニット(かのじょ)〉がいっている……。

『ワンテンポ《《も》》ツーテンポ《《も》》』って。

 10億分の1秒(ナノセカンド)の世界ですよ。

AIユニット(かのじょ)〉の感覚フィーリングは、《《人間ヒトとは違うんですから》》」


「……」


AIユニット(かのじょ)〉は、発声をめた。


こおりついたかのように、微動だにしない。


〈俺〉は、〈若手男性医師サージョン〉の胸ぐらにつかみかかりそうになった。


若手男性医師こいつ〉言うに事欠ことかいて、なんてことをいいやがる!!


そのとき、「どう思う?」というように……。


女先生ドクター〉が〈俺〉のほうをうかがっている。


それに気づき、グっと両のこぶしにぎりしめた。


感情をおさえ、なんとかとどまることに成功する。


「〈AIユニット(かのじょ)〉に選ばせるべきだ。

実際に〈二脚にきゃく〉の身体ボディをあつかうのは〈AIユニット(かのじょ)〉なんだからな」


若手男性医師サージョン〉は、「えっ!?」っという表情かおで〈俺〉を見た。


その視線からは、敵意が感じられる。


しかし、〈俺〉が目をそらさないでいると、目をそらしてしまった。


それは、納得とはほど遠い……。


いて言えば、何かをあきらめたかのように見えた。


「だけど、ですよ……。

 サポートシステムなしで、〈二脚()身体ボディを使いこなすのは至難しなんわざですよ?

四脚よんきゃく〉とちがって、いろいろとバランスとか微妙びみょうだし……」


「どうなんだ?」


〈俺〉は沈黙ちんもくを続ける、〈AIユニット(かのじょ)〉にうた?


「……いらない」


「はあ?」


「サポートシステムなんかいらない!」


「や、しかし、〈女先生ドクター〉?」


「サポートシステムのON(オン) / OFF(オフ)任意選択セレクトできるようにしましょう。

AIユニット(かのじょ)〉が、自分で」


サポート(この)システムのために、どれだけの開発期間と労力ろうりょくが……」


「使わないとはいってない。

 選ぶのは〈AIユニット(かのじょ)〉ということよ。

 これでいいわね?」


「ええ。

 ありがとう〈女先生ドクター〉。

隊長チーフ〉も、ありがとうございます!」


「サポートシステムなしでかえったりしても……。

 僕は責任持せきにんもてませんよ。

 まったく」


若手男性医師サージョン〉は、文句を言いながらも、端末コンソール操作そうさする。


「こっちに来て」


そして、〈AIユニット(かのじょ)〉の頭部とうぶソケットに端子たんしを接続した。


「無線でできないの?」


「有線の方が確実だし、早いんですよ。

 まかせておいてください」


若手男性医師サージョン〉は、れた手付てつきで設定を変更する。


そして、ソケットに差した配線ケーブルはそのままで……。


「よし。

 メニューを出してみて。

 そう……」


端末コンソールのモニタに、メニューらしきモノが表示された。


「これがいまの〈AIユニット(かのじょ)〉の視覚情報しかくじょうほう

 頭の中にHUD(ハッド)(ヘッドアップディスプレイ)があるようなものよ。

『思う』だけで、メニューが呼び出せる」


「スゴイもんだな!」


「ええ。

AIユニット(かのじょ)〉が失ったモノはあまりにも大きかったけど。

 そのわりに、あたしたちは、〈AIユニット(かのじょ)〉に考える限りの能力ちからを与えた……」


「そう。

 そのメニューのそこで……。

 サポートシステムをON(オン) / OFF(オフ)できるよ」


その後は、まあ、想像とおりというか、想像以上というべきか大変ではあった。


天井からつるされた転倒防止てんとうぼうし安全索ワイヤーがなければ、本当に何度も引っ繰り返っていただろう。


AIユニット(かのじょ)〉は何度も蹈鞴たたらみ、ぎこちないあゆみを繰り返した。


でも、その場にそれを笑う者は誰ひとりいなかった。


〈俺〉には意外だったが、〈若手男性医師サージョン〉もあれ以上、何も反論はんろんしなかった。


辛辣しんらつな言葉をくでもなく、自分の仕事(モニタリング)没頭ぼっとうしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ