第14話 懺悔か署名か?(コンフェション or オートグラフ?)
「〈モルモット小隊〉の諸君!
またやってくれたな!!
今回の君たちの任務はなんだった?」
「……」
「……」
「答えられないのなら……。
私が教えよう。
今回の君たちの任務は警備だった。
少なくともコンサートではない。
もっともコンサートという任務。
そんなものが、あ、れ、ばの話だがな!
おかげでマスコミ対応が大変だったよ!!」
「そういうことは、後であたしがまとめてうかがいます。
〈所長〉だって、〈某国〉のニュースを聞いたでしょう?
マスコミには発表できない……。
とはいえ、〈モルモット小隊〉の大きな成果ですよ!?」
「いや。
そうはいかない。
私は《《今回》》の話しをしている」
〈所長〉は、〈モルモット小隊〉とそのプロジェクトチームの面々をにらみつけた。
「それに、私はまだ君たちに用がある。
特に〈AIユニット〉にはな!」
〈所長〉は〈AIユニット〉の〈二脚〉の身体を指差し、歩み寄った。
〈AIユニット〉は静かに立っていた。
まるで“すべてを受け入れます”とでもいうように。
「サインしてくれないか?
娘がファンなんだそうだ」
「は?」
「え?」
「カンベンしてくれ!」
「!」
〈俺〉たち、〈俺〉と〈女先生〉と〈若手男性医師〉が反応したのは、ほぼ同時だった。
「〈所長〉!
冗談はまた今度にしてください!!」
珍しく声を荒立てた〈女先生〉。
それを遮ったのは〈AIユニット〉だった。
「待って、〈女先生〉!!
いいわ。
わたし、サインします。
でも、その前に……。
〈所長〉さんにひとつだけ訊たいことがあるの」
「な、なんだね?」
「お嬢さんのお名前は?
〈研究所〉のデータベースを検索したけど出てこないの。
わたしのアクセス権限じゃダメだっていうの?
シツレイしちゃう。
だったら、いっそ……。
中央の国民をハッキングしちゃうか……。
〈所長〉の通信記録を総検索にしてもいいんだけど……。
〈所長〉に直接訊いたほうが早いかなって(笑)」
「は?!」
「え?!」
「カンベンしてくれ!!」
「絶対にやめろ!
何もするな!!
いますぐなんでも教えてやるっ!!」
ここのところ十分すぎるぐらい、いろんなことがあった。
〈俺〉はもう、これ以上のゴタゴタはカンベン願いたかった。
それは、その場にいた誰もが同じ意見・心境だったと思う。
ただ一体、鋼鉄の心臓を持つ存在を除いては。




