第97話 もう一度出会って
「優都?……構ってくれないと寂しいんだよ?」
こころに頬をつつかれてる気がするが、今は無心で刀に意識を集中させる。
「……む。構ってくれないなら、凄いことしちゃうんだよ?それでもいいの?」
意識を刀だけに集中させ、静かに上段に構え……
「──ちゅっ」
「──!!?!???!」
『刃殺』を放とうとしたところで頬に柔らかい感触が。
……頬に、キスされた?
「……構ってくれなかったら、次は唇にするんだよ?舌とかも入れちゃうんだよ?」
「無視とかしませんからマジ勘弁してください。あと、出来ればキスは遠慮してほしいです。」
年頃の女の子が軽々しくキスなんてしちゃいけません!
と、思ったんだけど。年齢的には……うん、そこは気にしないでおこう。
外見はただの少女だもんなぁ。妖怪ってすごいね。
結局、ほとんど鍛練に時間は取れなかった。
──────────
「た、ただいま優都。」
「……うん、おかえり?どうしたんだ霊夢。顔が赤いぞ?」
「な、何でも無いの。私は一旦部屋に戻るわねっ。」
帰ってくるなりすぐに自室へと行ってしまう霊夢。なんか慌ててるみたいだったが、何かあったのだろうか。
「……霊夢、もう夕御飯出来てるよ?」
こころに言われて、廊下でずっこける霊夢。流石はこころだ。笑いを分かっている。
打ったのか、赤くなった額を押さえながら霊夢はこちらに戻ってくる。
「そういうのは早く言いなさいよ……」
「……言う前に霊夢が部屋に戻ろうとしたんだよ?」
「それはそうだけど!……まぁ良いわ。出来てるなら先に食べることにしましょう。」
40分ほどして。
夕飯を摂って、霊夢は部屋へと戻っていく。食事中、何故か僕の方をチラチラと見て顔を赤くしていたが、何かついていただろうか。
「……私はお皿を洗っておくよ?優都はまたいつもみたいに鍛練?」
「そうだな……。ちょっとそこまで行ってくるよ。30分もしたら帰ってくるから。」
そう言い残して、僕は山の方へとやって来る。あまり神社に近いと木が倒れたりすると困るし、遠いと移動が面倒。だから丁度良い位置にある森でよく鍛練をしている。
いつもなら静かに一人で鍛練するのだが───
「先客、か。また会ったな、異変さんよ。」
「……あら、誰かと思えばこの前の。どう?大切な仲間を殺される可能性を突き付けられて、自分の油断に気付いたかしら?」
僕を確認するなり嫌な笑みを浮かべてこちらを見る。今度は誰を乗っ取ったのか、僕と同じ歳くらいの少女になっていた。
「おかげさまで、以前よりも周りを警戒するようになったよ。」
「ふふっ、それは良かったわね。自分の愚かさに気付いたようで。」
挑発的な口調で言葉を重ねる異変。
別に腹を立てることもない。自分の愚かさに気付いたのは事実だ。
「で?こんなところで私と話をして何の意味があるの?戦わないのかしら?」