第94話 彼女の恋路
──────────(view side Reimu)
「で、お前は空気に耐えられなくなって逃げてきた、と?」
「言い方が悪いわよ!ただ二人きりにしてあげるために出てきただけ!」
「……その言い訳は苦しいと思うわよ、霊夢。」
魔理沙の家にやって来た。
最近、といってもこころがうちに来てからだが、毎日ここへ来ている。
来る度に優都と何があったのか聞かれるのだが……
「そう言えばあんた達って、そんなに仲良かったかしら?私が来てる間ずっと一緒に居るわよね?」
魔理沙とアリス。アリスが魔理沙に好意を寄せているのは分かっていたが、魔理沙の性格でそれを簡単に受け入れるとは思えない。この二人に何があったのだろう。
「あぁ、それか。悪いな、それは霊夢にも話すことが出来ないんだぜ。あの件に関しては口止めされてるからな。」
「とりあえず、私達は以前より近い関係になった、ということよ。」
……本当に何があったのだろう。すごく気になるが、話せないと言うのなら仕方ないか。
「というか、私としてはどうして霊夢が優都のことを好きになったのか、そっちの方が気になるんだぜ。」
「別に……これと言って話すような理由は無いわよ。いつの間にか好きになってた、恋愛ってそう言うものなんじゃないの?」
実際、私は本当に理由もなく唐突に好きになっていた。そこにわざわざ話すような経緯なんてない。
ただ、彼には『何か』がある。私達の心を奪った不思議な『何か』があるのだと思う。
「ははっ、霊夢も随分と乙女なことを言うんだな?本当に霊夢か疑うレベルだぜ?」
「知ってたけどあんたかなり失礼よ。百合っ子魔法使いのくせに生意気ね。」
「言うじゃないか貧乏巫女。その気持ち、私が優都にばらしてやろうか?」
「魔理沙。そんなことして良いと思ってるの?人の恋路は邪魔するものじゃないの。」
魔理沙の一言にアリスがピシャリと言い放つ。魔理沙は『うっ』と言いたげな顔でアリスを見つめ、黙った。
「私には以外でも何でも無かったけどね。初めて彼をここに連れてきた時、何となくそうなるって分かってた。」
「……流石に、あんたには敵わないみたい。私、そんなに露骨だったかしら。」
「そんなこと無いと思うぜ。私には全く分からなかったからな。」
それは魔理沙がバ──鈍感なだけだ。
でも、そうか。そんなに前から私は優都のことを見ていたんだ。
「……好きなら、そろそろ逃げ回るのやめたらどうなの?」
アリスが真剣な表情で言う。あのアリスが魔理沙以外のことでここまで真剣に話すのは珍しい。
「逃げ回っていたって何も進歩しないし、意味なんて無いわよ?それとも、そのまま想いを押し殺してしまうつもり?」
「……そんなつもりは、無いわよ。出来ることなら、ちゃんと想いを伝えたい。」