第92話 夫婦かな?
「……どうしたの、優都。夕御飯、出来てるよ?霊夢がお腹空かせてるから、ちょっと急いでほしいよ?」
「え、あ、うん。すぐに行くよ。今日の夕御飯は?」
「いつも通りだよ?ご飯に味噌汁、焼き魚に卵焼き。」
うん、いつも通りだ。けれど、卵焼きは何故か毎日違う味付けだし、味噌汁も味が少しずつ違う。魚だって、毎日違う魚が出される。
同じ味に飽きないように、という気遣いだろう。本当によく出来た子だ。
「でも、さ。味噌もそうだけど、魚なんて何処で買うんだ?」
「一度人間の里まで行くんだよ?ここから歩いて行くのは無理だけど、私達は空を飛ぶから。」
そうなのか。色々と外の世界と違うところが多くてそこまで見てなかったが、技術に関してはだいぶ向こうの方が進んでいるようだ。
まさか魚を手に入れるのに人間の里まで行く必要があるとは思わなかったが。
「というか、それじゃ魚が何処で捕れるかの説明になってないよね?」
「……?それは人間が捕ってくるよ?何処で捕ってるかは分からない。」
……何処で捕ってるか分からない魚って、結構危険じゃない?
まぁ、身体に異常も無いし、大丈夫だろう。人間ってことは、ちゃんと安全かどうかも分かってるんだろうし。
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「うん、ご馳走さま。今日も違う魚なんだね。卵焼きの味もやっぱり違ったし。」
「そうね。毎日毎日違う作り方するのって、大変なんじゃない?」
霊夢も毎日味が違うことに気づいていたみたいだ。僕が来るまで自炊していたのだから当然か。
そして、自炊していたってことは、毎日作り方を変えるのがどれほど大変か分かってるんだろう。
「別に問題は無いよ?私がやりたくてやってることだし、食べてもらえるのは嬉しいこと。」
そう言って、こちらに微笑んでくれる。その笑顔はどういう……?
「うん、もうここに住んでも良いわ!なんなら優都は追い出しても良いわよ?」
ひ、酷い……幾らなんでも追い出すのは酷すぎるだろ。
別に見返りを期待して助けてるわけじゃないけど、こんなことを言われたら要求したくなる。
「そんなことしないよ?私は優都にも食べてほしいんだよ?」
「……この子、強敵ね。早苗やレミリアの相手なんかしてる場合じゃないわ。」
霊夢がなんだかぶつぶつ呟いてるが、今はそんなこと関係ない。
こころ……天使だ。なんて優しいんだろうか。
「ありがと、こころ。これからは僕も手伝うから、困ったら言ってよ?」
「……ん、分かった。時間が無いときは、優都にも手伝ってほしいんだよ?」
こころが嬉しそうに笑う。それを見て、僕も自然に頬が緩む。
「あんた達、本当に夫婦みたいよ?私お邪魔なんじゃない?」
「……そんなこと、ない。」
今の間は何だろう。それと、何で目を反らしたんだろう。
いや、言わなくていいよ、うん。