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東方 永恋郷『Absolute Sense』  作者: 如月 椿
第2章 悔夢異変
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第89話 優しき偽善者

どうも、魔理沙だぜ。


こころの可愛さで和む展開にしたかったみたいなんだが、見事にシリアス展開へ戻ったな。

ある意味才能なんだぜ。

「いや、いつまでも僕と一緒に居てもいいのか?」


こころだって元いた場所に帰る必要があるだろう。霊夢の許しが出て博麗神社に居るけど、こころにも元々住んでいた場所があるだろうに。


「そこは心配ない。ちゃんと許可は取ってきた。」


「……あの異変の後、すぐにここに来たよね。いつ許可を取ったのさ。」


「………昨日?」


何故に疑問形?絶対嘘だよね?許可取ってないよね?

好かれてるのは嬉しいけど、流石に許可は取るべきじゃないかなぁ。


「大丈夫。自由に動き回っても何も言われないから。むしろ、私達妖怪が動き回って何か言われることの方が稀。」


っと、そうか。

こころの見た目なら中学生、高校生ほど。親が居れば心配するだろうなぁ、と思ったが、それは外の世界での常識だ。


「うんまぁ、それなら良い、のかな?」


「良いの。家事は私がやるし、それなら何も文句はないはず。私はどうしても、優都と一緒にいたい。」


本当に、どうして僕はこの子にここまで好かれているんだろうか。

こんな愚かな人間に、好かれる要素などあったのか?


「……あのさ。僕の何処がそんなに好きなのさ。好かれる要素なんて、微塵もないように思えるんだけど?」


僕がそう問うと、こころはじっと僕の顔を見つめ、しばらくして寂しそうに笑う。

その表情が何を意味しているのか、僕にはよく分からない。


「……やっぱり、優都は昔の私と似てる。」


「昔のこころと……似てる?」


昔の僕は確かに無表情で、何をしても何をされても、何も感じないような人間だった。

だが、この世界にやって来た僕は、昔ほど酷いものでもないと思っているが……。


「優都は感情豊かで優しい人。でも、根本的なところが昔の私と似てる。自分のことを何も考えてない。」


こころが言ったそのことに、僕は何も言えないでいた。

事実だ、と思う。『自分を大事にしていない』、僕がよく他人から聞く僕の評価だ。


霊夢も、レミリアも。僕のことをそう評価している。

そして……花梨も。


『優都はね、私達のことになると徹底的に優しいくせに、自分のことになった途端、ひどく冷めた目をするんだよ。』


「これまで三日、見ていて分かった。優都は、誰かが傷ついたら自分の全てを懸けても守ろうとするくせに、自分が傷ついたら何も言わないんだ。……それはね、とても残酷なことなんだよ?」


そう言ったこころが、あの頃の花梨と重なった。

花梨と、同じことを言うんだな。たった数日で、人のことをよく見ている。


「残酷、と言われてもな。……あのな、こころ。誰かを救うには、誰かを守るには、必ず何かを犠牲にしなくちゃいけないんだ。」


「……だから、優都が犠牲になるの?どうして優都なの?どうしていつも、優都だけが犠牲になるの?どうして優都は、何も言わないの?」


……誰かが犠牲になる必要がある。それなら、自分が犠牲になろう。

その決断が出来る者が、一体どれほど居るのだろう。


誰かを救うために犠牲になるのは、単なる自己満足だ。

何か対価を得る為じゃない。


僕はヒーローじゃない。どこにでもいる、何も出来ない無力な人間で───


「傷つくなんてこと、もういつの間にか慣れてしまったよ。」


───ただの偽善者だ。

どうも、霊夢よ。


こころ、すごく贔屓されてるわね。

なんだか羨ましいわよ。私ももっと出番欲しい!


まぁ、私はこれからたっぷりあるんだけど。



次回までゆっくり待っていなさいよね!

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