第86話 遊びの理由
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うん、生きてるね。知ってた。
一応は全部斬ったからね。
「あら、手加減したとはいえ、思ったよりも怪我してないわね。」
「君達は僕に何か恨みでもあるのか?」
怪我はしてないけど、結構危なかったぞ。何発かは顔を掠めていったし。
これは……日頃の行いが良かったと言える、のか?
「はぁ………。それで?まだやるのか?まだやるなら僕も本気でいかせてもらうぞ?」
「あら、優都の本気?それは見てみたい気もするけど、時間が来ちゃったからやめておこうかしら。」
ん……?あぁ、なるほどねぇ。
この『遊び』はそういうことなのか。
なんだ、ちゃんと目的があったんじゃないか。
「目的があったんなら、最初からそう言ってくれよ。というか、これの為ならこんなことしなくても良かったんじゃないか?」
「そうなんだけどね。まぁ、ちょうど良い機会だからやってみたのよ。前々からやりたかったし。」
そうですか。前々から僕のことボコボコにしたかったんですか鬼ですね貴女達。
「ま、その件に関しては後でじっくりと言い訳を聞かせてもらうとして。とりあえず今は、こっちの言い訳を聞こうか。」
そう、僕は上空に居る少女に話しかける。
少女はゆっくりと地に降り立ち、僕に殺意を向けてくる。
殺意が濁ってるって、何度も言ってるんだけどな。というか、僕何か悪いことしたかな?なんで彼女に睨まれてるの──心当たり、すごくありますね。
「あんた、本当に馬鹿なのね。身体を乗っ取るの、これで何回目よ。」
霊夢が呆れ果てたように言う。うん、ここまで何度も何度もやってたら、呆れるのも分かるよ。
彼女は間違いなく『異変』だ。それは分かるが、誰を乗っ取ったのかは分からない。
ピンクの髪に、般若のお面を付けた少女。無表情なのが少し残念だが、それを抜いてもだいぶ可愛い。
「今乗っ取られてるのは秦こころ。付喪神よ。戦うのは、ちょっと面倒ね。」
「……分かった。強いといっても、レミリアや霊夢ほどではないんだろう?それなら余計なことをする前に、閉じ込めてしまうよ。」
僕は一歩前に出て、霊夢とレミリアを後ろに下がらせる。
よほど僕を警戒しているのか、向こうはそれだけで数メートル後方まで退がる。
残念だけど、それだけ退がってもスペルカードは効くんだよなぁ……。
というか、あいつ回を逐うごとに馬鹿になってないか?
「神域『ロスト・エデン』」
スペルカードを発動し、相手だけを結界の中に閉じ込める。また誰か乗っ取られるかもしれないので、僕と異変だけがこの結界の中に居る。
「……貴方が強いのは分かっているけど、貴方では私を殺しきることは出来ないわ。」
「まぁ、君がどういう存在で、どういう理由があってみんなの身体を乗っ取っていて、どうやってそんな力を使っているのかは知らないけど……いや、前に聞いたか。」
確か、『退屈だったから殺してあげようと思った』とか言ってたか。
「というか、殺されかけたのに、よくもまあ僕の前にやって来れたよね。馬鹿なの?」