第83話 乙女な紅い月
どうも、魔理沙だぜ。
私の出番が少なすぎて、忘れられたのかと思ってる頃なんだが。
もう少し出番を増やしてほしいものだぜ。
『……まぁ、その件もそうだけど。異変の件も、しっかり考えてみるといい。』
そう言い残して、『僕』は消える。
どうやら用件はそれだけのようだ。
世界が……消える。
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意識が覚醒する。目を開けて最初に目に入るのは、見慣れた天井。
どうやら誰かが居間に寝かせてくれたようだ。
「……いちいち『あっち』に呼ばれるのも面倒だな。急に倒れたら『こっち』で何をされるか分かったものじゃないぞ。」
ゆっくりと起き上がる。空には孤独な月が輝き、暗闇を照らしている。
月明かりに照らされる廊下を歩いて居間へと向かっていると、外にレミリアが一人で立っているのを見つけた。
何も言わず月を見つめる彼女は、思わず見惚れてしまうほど綺麗だ。
「ん……あら、優都?起きたのね。身体は大丈夫なの?」
僕に気づいたレミリアは、ゆっくりと歩いてこちらへとやって来る。
心配してくれたのか。……心配してくれるのが、彼女らの普通、なのか。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、レミリア。」
「べ、別に心配なんてしてないわ。無事なら良いの、無事なら。」
笑顔で言うと、レミリアが顔を真っ赤にして目を反らした。照れているのか?
「何を、してたんだ?」
「特に何かしていたわけではないわよ。ただ、昔のことを思い出していただけ。今夜は満月かと思ったのだけど、十六夜の月だったみたいね。」
レミリアが夜空を見上げる。空には、少しだけ欠けた十六夜の月が孤独に輝いている。
夜空に散りばめられた星は、輝きを失って夜の闇に溶ける。
「本当に、月が綺麗だ。」
「あら、それは愛の告白かしら?貴方はなかなかロマンチックな告白をするのね?」
レミリアが悪戯っぽく笑う。
何故それをレミリアが知っているのか。いや、今はそんなこと、どうでもいいか。
「仮に告白だとして、君はそれを受け入れるのかい?」
「え、それはそのぉ……。う、受け入れないこともなくもないというか……何と言うか。」
てっきり『当然断るわ。』とか言われるかと思ったが、予想外の反応で寧ろこちらの方が困ってしまう。
ちょっとした仕返しが失敗してしまったようだ。
「うー。どうせ優都にそんな勇気なんて無いから、別に良いのよ。そういう冗談を言うのは、本当に告白する勇気を持てるようになってから、かしら?」
「……レミリア、僕が告白したら受け入れるの?その口ぶり、捉え方によってはそんな風に聞こえるよ?」
その言い方だと、『貴方が本気で告白するなら受け入れる』なんて風に受け取れるけど、良いのか?
出会ってまだ長くないし、お互いのことを深いところまで知っているわけでもない。
流石に恋人まで関係が発展するのは、早すぎると思うが。
「そそ、そんなこと言ってないわよ!?だだだ、大体ねぇ。出会ってからそんなに経ってないのだし、もう少しお互いを知ってからそういう話をすべきじゃない?」
なんで顔真っ赤なんですかレミリアさん。
ついでに言えば、それも『お互いを知ってからなら恋人になっても良い』って言ってるようなものだぞ。
レミリアって、こういう話には弱い方なのか?意外……でもないか。
どうも、霊夢よ。
もう、レミリアだけ贔屓しすぎじゃない?
もっと私も登場させなさいよ!出番が欲しい!
優都の鈍感も酷いものね。『モテる=鈍感』は全世界共通なのかしら。
さぁ、少年よ鈍感であれ!(モテるとは言ってない)
次回までゆっくり待っていなさいよね!