第82話 僕は僕へと問いかける
どうも、魔理沙だぜ。
今回は優都と優都の会話だけで終わるみたいだな。なんだかもう、私も何を言っているのか分からなくなってきたぜ。
謎が多すぎて、これじゃあ全部解き明かされるのか不安になってくるレベルだぜ。
『ふっ。よく分からないって顔をしているね。』
「実際よく分からないからね。で、ここに呼んだ理由はなんだ?今の会話が理由ってわけじゃないんだろ?」
こいつが僕をここに呼ぶ理由が、ただの雑談なわけがない。
こいつは、何か重要な用事がある時以外、滅多に僕を呼ぶことはない。
『流石は僕だね。話が早くて本当に助かるよ。』
どんな表情をしているのかは分からないが、少し笑っているような気がする。
そもそも、どうしてこいつには実体が無いのか。
そこに『在る』という感覚的なもので、どんな姿をしているのかは全く分からない。
境界異変の時の『影』のように、その形が掴めない。
今はそんなこと、どうでもいいか。聞いたところで答えてくれるはずもない。
『今回の異変で、君の大切な人達を乗っ取っている存在。……君は、誰だか分かっているんじゃないのかい?』
急に真剣な声になり、『僕』は僕に問う。
……確かに、何となく分かってはいた。
雰囲気が、まさに『彼女』だった。
「……でも、『あいつ』は死んだんだぞ?僕はその場に居合わせたんだ。あいつは、間違いなく死んだ。」
交通事故。
どこにでもある、ごく普通の死因。
その場に居合わせた僕には、何一つとして出来ることはなかった。
ただ近寄って、血まみれの手を握って。まだ温もりの残っていた頬に触れて。
もう二度と訪れることのない彼女との日々を思い返して、泣き叫ぶことしか出来なかった。
「今更、『あいつ』が僕の前に現れた、とでも言いたいのか?……随分と悪趣味な冗談だな、それは。」
『あいつ』は死んだ。世の中のあまりにも普通すぎる現実に殺された。
生きていたはずがない。何度も確認した。何度も何度も、ほんの僅かな可能性を信じて。
無駄だった。分かっていた。
認めたくなかっただけ。受け入れたくなかっただけ。
現実は、そんな我が儘な望みが通用するほど、甘いものではなかった。
「……そんなことを話す為に、わざわざ僕の記憶を引っ張り出して来たのか?」
『まさか。というか、君が勝手に覗いたんだよ?僕が無理矢理見せたわけじゃないだろう?』
僕は何も返さずに上を見上げる。
ここからでは見えないほど天高く、膨大な記憶が映像となって並んでいる。
『……まだ、後悔しているのかい?別にあれは、君のせいではないだろうに。不慮の事故、というものだよ。』
「そんなことは、分かっているさ。……でも、偶然とは言っても、その偶然を起こすきっかけを作ったのは僕だ。」
───嘘つき。
僕が選んだ一つの選択が、結果として『彼女』の死を招いた。
……これは、僕のせいだ。間違った選択肢を選び取った僕に責任があった。
『……傲慢なものだな、君は。我がことながら、本当に呆れるよ。何でも自分のせい、か?責任を抱え込むのが偉いと思うなよ?』
『僕』は僕の考えを、想いを、僕自身を、否定する。
嘲るように。蔑むように。
だったら、どうすれば良い?
心が半分に引き裂かれたままの僕は、どうやって彼女の死を受け入れれば良かった?
自分が悪いのだと、言い聞かせて、納得して。
そうしないと、また殺してしまいそうだった。現実を、殺してしまうかもしれなかった。
傲慢だ。知っている。
何でも自分のせいにして、自己犠牲を繰り返すだけの偽善者。
そんなことは、自分自身が一番よく理解していた。
どうも、霊夢よ。
『自問自答』、と言えるのかしら。
作者のヤツ、ちょっとした自虐も混ぜてるみたいね。……読者の皆さんは、そんなこと気にせずに読んでいてね。
優都の過去には謎が多すぎて、正直もう何が何か分からなくなってきてるわ。
次回までゆっくり待っていなさいよね!