第81話 嘘つきの過去
どうも、魔理沙だぜ。
ちょっと危ない発言が入ってるな。
良い子は見ちゃダメなんだぜっ!
『あはは、なんだかんだでアナザーもだいぶ壊れてるね!?君ってば、今の一瞬彼女もろとも───』
「凍獄『ニブルヘイム』」
『狂気』の話を無視して、僕は霊夢──その中にいる『異変』に向かってスペカを発動する。
が───
「……やはり逃げたか。逃げ足が速すぎる負け犬というのも、厄介なものだな。」
行き場をなくした黒い感情が胸の中に渦巻いている。
さて、これをどうやって発散したものか。
『ミカヅチをヤったらどうなのさ?あいつは寧ろ、待ってると思うよ?』
……お前って、過去の僕だよな?そんな言葉を知っていたか?というか、絶対やらないからな殺すぞ?
『あはは、そう緊張しなくても良いじゃあないか。あの子は絶対断ったりしないよ?』
冗談でも断りそうにないから困るんだろ!?……なんであいつ、あんなに僕に懐いてくるんだろうな。
『……はぁ。その理由が分からないってのは、実に君らしいよ。』
呆れ気味にそう言って、『狂気』の気配が消える。
まったく、過去の僕は何処であんな言葉を覚えたのか。
『ヤる』って、何処のヤンキーだよ。
うん、次言ったら問答無用であの人格斬ってしまおう。
とりあえずストレス発散の為に、周辺の森を更地にすることに決めた。
「……あ、れ?優都、戻ってきてたの?レミリアはどうなった?」
『異変』から解放された霊夢がゆっくりと身体を起こす。
どうやら、乗っ取られていた時の記憶は無いようだ。
「あぁ、レミリアは大丈夫だ。それより霊夢、お前の方は大丈夫……か……」
言い終わる直前に、視界が歪み、身体がふらつき始める。
─────嘘つき。
また、記憶が流れ込ん、で………。
──────────
何度、繰り返しただろう。
何度、あの泣き顔を見ることになったのだろう。
何度、失敗を悔やんだのだろう。
映像となって蘇る、無限にも等しい時間の記憶。
どれも、僕には無い記憶。知らない記憶。
一体何人の人生を集めたら、これだけの膨大な記憶を得られるのだろう。
そこにある記憶には、全て同じように『絶望』と『後悔』が映っていた。
どの記憶も、ひどく凄惨な結末を向かえる。
無数に流れる記憶の波の中に、一つ見覚えのあるものを見つける。
あれは……間違いなく。
見間違えるはずもない、僕の記憶だ。
「……嘘つき。守るって、言ったくせに。」
聞き覚えのある声が聞こえて、聞いたことのある言葉が聞こえて……僕は、記憶から目を背ける。
『やはり、お前は彼女とのことに向き合えないか。逃げてばかりいても、現実は許してくれないよ。』
「うるさい。お前も『僕』だろ?この気持ちくらい理解できるだろ。」
『さぁね。君と僕とは、同じであって、同じでない。僕という存在は、なかなか厄介なことになっているものだね。』
他人事のようにそう言う。
何が言いたいのかいまいちよく分からない。
どうも、霊夢よ。
ようやく後書きに戻ってきたわ。
また謎のシーンに入ったわね。
優都の過去に関しては、まだまだ分からないことが多いわね。
次回までゆっくり待っていなさいよね!