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東方 永恋郷『Absolute Sense』  作者: 如月 椿
第2章 悔夢異変
74/211

第74話 人と変わらない

どうも、魔理沙だぜ。


本当にシリアス展開が続いてるな。

異変が解決すればまた、コメディ展開があるんだぜ。だいぶ先になるけどな。


……シリアスばっかりだけど、見てて面白いのか?

──────────


『ロスト・エデン』閉界。


無限に広がる暗闇が崩れ落ち、一筋の光が差し込む。

光は少しずつ強くなり、僕の世界を照らした。


空を覆っていた緑色の瘴気は、もともと存在しなかったとでも言うように消え失せ、雲一つない晴天が広がっている。


眩しい日差しに目を細め、周囲を確認する。


「……うん、誰も居ないな。」


ミカヅチにはあぁ言われたが、正直まだ少し怖かった。

もし、レミリアに怯えられて、誰も近寄らなくなってしまったら。

そう思うと、どうしても前を向いて歩く勇気が出なかった。


「……ははっ。逃げ続けてきた過去と今さら向き合うなんて、簡単に出来るわけないじゃないか。」


僕は、強くなんてない。

いつまでも逃げてばかりの僕が、強いはずがない。


過去に背を向けて歩いてきた僕は、いつまでも脆く弱い僕のままだ。


けれど────

時に、無理矢理にでもそれと向き合わなければいけないことがある。


誰も居ないと思っていた。

けれど、そこには居たのだ。


「優都………。」


正直に言えば、今は会いたくなかった。

会ってしまえば、嫌でも向き合うことになるから。

過去から目を背けられなくなるから。


「……どうして、まだここに居たんだよ。」


どんなに取り繕っても、どうしても怖い。

また、怯えられたくない。もう一人になるのは嫌だ。

臆病な自分が顔を出して、どうしても前を向けない。


「……優都に、聞きたいことがあるの。良いかしら。」


レミリアは、真剣に僕の目を見て言う。

怯えて逃げられるよりはマシだ。何も言わず離れていくことに比べれば、よほど良い。


「貴方はどうして、私達のことを『化け物』だと言わなかったの?人じゃないことは、知っていたのでしょう?」


どんなことかと身構えていたが、予想外の質問だったから目を瞬かせる。


「……どうしてって、話し方も考え方も、笑ったり泣いたりするのも、どれも人間そっくりじゃないか。外見が少し違うだけ。君達は、人間と何も変わらないよ。」


偽りのない、僕の本心。

何故今それを聞かれたのか、理由は分からないけれど、これが僕の考え方だ。


妖怪だろうが何だろうが、話し方も考え方も感情の起伏も、彼女らは人間と何も変わらない。

僕からすれば、『人間より長く生きている』だけなのだ。


僕の本心を聞いたレミリアは、顔を伏せて黙っている。

その表情は見えない。


僕の本心を聞いてどう思うのか。

『狂っている』と蔑むのか?それとも、『間違っている』と否定するのか?


答えは、どちらも違っていた。


唐突に訪れる、確かな感触。

レミリアに抱きつかれたのだと気づいたのは、少し経ってからだった。


「ごめ……ごめんなさいっ。貴女が過去の私にあまりにも似ていてっ。あの頃の自分を見ているみたいで嫌で!自分もあんな表情で人を殺していたのかと思ったら怖くて!」


嗚咽混じりの声。

止めどなく流れていく涙が、彼女の頬を濡らす。


そう、そうか。

レミリアも、過去の記憶に囚われて苦しんでいたんだ。

……僕と、同じなんだ。

どうも、霊夢よ。


『人間』と『人外』。

そして、同じ『過去に囚われた者』。


二人とも、苦しんでいたのね。


でも、過去に囚われて苦しんでいるのは、この二人だけじゃない。


それはそのうち分かるわ。



次回までゆっくり待っていなさいよね!

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