第73話 脆い者、導く者
どうも、魔理沙だぜ。
異変とは関係ない話が結構長く続いてるな。
そろそろ終わるんだぜ。
『悔夢異変』って、どんな異変なんだろうな。
今の時点じゃ何も分からないんだぜ。
「人間、らしい………?」
「はい、とても。寂しさや、不安。そんな感情は、普通の人間が持つものでしょう?」
確かに、そう言われれば人間らしい感情だと言える。
だが、それでは………。
「仮に。主様が『異常なほど狂っている』のだとして。そんな狂った人間が、周囲のことを気にすると思いますか?」
ミカヅチが真っ直ぐに僕の目を見て言う。
狂った人間が周囲を気にすることなどないだろう。
邪魔だと思うなら、すべて殺せば良いのだから。
「言ってしまえば、感情があるから狂うのです。『化け物』は人間ほど繊細な感情を持ちませんから、狂うことなんてありません。主様は、化け物ではありません。」
「それは……分かってる。でも、僕は何人も人を殺した。この事実はどうしたって変わらない。化け物じゃなくても、『殺人鬼』であることに違いはないだろう?」
誰かを守るためではなく、自分を守るためでもなく。
ただ人を殺した僕は、ただの『人殺し』でしか無い。
それが例え、どんなに非道な行いをした人間であろうとも、等しく『人』であることに違いはないのだ。
「……主様は、自分が人を殺したことに意味はないと思っているのですね?」
「当たり前だよ。実際、僕はただ裏切られるのが怖いから裏切っただけ。……そのうちに、犯罪者を殺し始めて、正義のヒーローを気取って。」
僕が殺す対象は、『僕に近づく人間』から『罪を犯した人間』へと変わった。
ただの偽善者。殺したい衝動を、『残虐な殺人犯』に向けただけ。
僕自身も、『残虐な殺人犯』と何も変わらない。
「確かに、人を殺したことには変わりありませんし、罪のない人間も多く殺しています。」
僕はミカヅチから顔を背ける。
それを見て、彼女は一呼吸置き、『ですが』と続ける。
「主様が殺した中には、十数人にも及ぶ殺人犯も居ました。確かに殺す必要はなかったですが、主様が殺していなければ、無関係な人間がもっと多く死んでいたかもしれませんよ?」
ミカヅチの言う通り、僕は捕まっていなかった殺人犯を何人も殺した。中には、十数人を殺している者も居た。
放っておけばずっと人殺しを続けていたのだろう。
「……お前はよくもまぁ、こんな僕に味方してくれるものだな。」
ミカヅチの方へと向き直し、真っ直ぐ目を見て微笑む。
いつも、僕の傍に居て、僕を支え、導いてくれる彼女。
その存在は、思っていたよりも大きいものになっていたのだろう。
今は、彼女の言葉がこんなにも信じられる。
「主様は、すごく繊細な方ですからね。私が支えてあげないと、すぐに崩れてしまうでしょう?」
「……そうだな。」
僕は、ひどく脆い。
たった一言で壊れてしまうほどに、脆いのだ。
「それに、私は主様が大好きですからね♪いつになったら私の気持ちに答えてくれるんでしょう?」
「……悪いな。もっと良い人を探しに行け。僕じゃお前を不幸にすることしか出来ないだろうから。」
脆いからこそ、彼女の存在は、こんなにも暖かく感じられるのだろうか。
「残念ですね、私は主様以外に興味なんてありませんよ♪」
どうも、霊夢よ。
なんだか話がややこしいわね。
結局何が言いたいのか分からなくなってきてるわ。
まぁ、それはともかく。
そろそろこの話も終わりかしら。
また異変の話に戻るわね。
次回までゆっくり待っていなさいよね!