第72話 狂気の者の人間らしさ
どうも、魔理沙だぜ。
レミリアと優都、これからどうなるんだろうな。
私とアリスの登場がやたらと少ないが、これにはちゃんとした理由があるんだぜ。
だいぶ先になるけど、ちゃんと分かるぜ。
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『くくっ、お前も大変なものだな、アナザー。女にフラれでもしたのか?』
外からの干渉の一切を封じた結界の中で、『オリジナル』と『アナザー』が相対する。
「黙ってろよオリジナル。お前も『僕』なんだから分かってるんだろ?」
『あぁ。……まぁ、君と僕とでは考え方が少し違うみたいだから、君がどうしてこの空間に閉じ籠ってるのか理解できないけどね。』
「僕はお前の存在が未だに理解できてないよ。結局のところ、お前は何なんだ?」
こいつは本当に謎だ。
過去の『僕』のような、人格の一つなのか、ミカヅチのような精神体なのか。
それとも、また別の存在なのか。
こいつについて、今の時点では何も分かっていない。
『……残念だが、それについて話すのは今じゃない。時が来たら、ちゃんと話すよ。』
「……話すつもりが無いことは分かった。とりあえず引っ込んでてくれ。今は話したい気分じゃない。」
そう言ってオリジナルに背を向け、僕は結界の中を歩く。
しばらくすると、気配を感じなくなる。引っ込んだか。
「……でも、ここから出ないといけないんだよな。どうしたものか。」
「主様は考えすぎではないでしょうか?あの吸血鬼一人くらい、別にどう思われても良いではありませんか。」
いきなり背後から声。
呼んでいないはずのミカヅチが居た。
誰が呼んだんだ?
……僕が呼んでいないのだから、『オリジナル』だろうか。余計なことをしてくれる。
「お前がレミリアをどう思ってるのか知らないが、彼女は僕にとって、とても大切な存在だ。……だからこそ──」
そこまで言って、言葉に詰まる。
レミリアが遠く離れていってしまったように感じる。
「……彼女達も、考えてることは人間と何も変わらないんだ。……でも、僕は違う。」
ミカヅチは黙ってこちらを見つめている。その瞳にどんな感情が宿っているのかはよく分からない。
「僕は、狂っている。何から何まで、誰よりも異常に壊れている。……僕こそ、本当の化け物だ。」
僕は、誰よりも壊れている。
人を殺し、殺し殺して、狂った笑みを浮かべて剣を振るった。
本当は、妖夢に僕の教えなんて受けてほしくない。
僕の振るう剣は、何人もの人間の命を、無差別に意味もなく斬り捨ててきたもの。
人を殺したことなんて無いであろう彼女の真っ直ぐな剣を、僕が汚してしまうのだ。
「一つ、質問をしてもよろしいでしょうか?」
ずっと黙っていたミカヅチがようやく口を開いた。
いつもより真剣な眼差しに、思わず目を逸らす。
「……なんだ?」
「主様は、あの吸血鬼に『化け物』と言われて、どう思いましたか?」
……『化け物』。
僕が一番言われたくなかった言葉。
それをレミリアに言われて、僕がどう思ったのか。
「……すごく、苦しかったよ。『あぁ、もう彼女とは会えなくなるんだな』って……また、僕はあの頃に戻るのか、って。」
「そうですか。主様は、そういう方ですからね。……それを聞いた上で、一つ言わせてもらいましょう。」
ミカヅチの顔を見つめる。
彼女は先ほど見せた真剣な表情とは違い、今度は少し微笑んで、言う。
──それはとても、人間らしい感情ですね、主様。
どうも、霊夢よ。
さて、最後のミカヅチのセリフは、どういう事なのかしら。
次で分かると思うわ。それまでどんな話になるのか予想でもしてみなさい。
それより、私の出番が無いんだけど。
なんだかレミリアがすごく贔屓されてない?
ズルいと思うんだけど。
まぁ、私は後書き担当をさせてもらってるから別に良いんだけどね。
次回までゆっくり待っていなさいよね!