第70話 脆く、崩れて。
どうも、魔理沙だぜ。
また少し、雲行きが怪しくなってきたぜ。
というか、またシリアス展開ばかりだな。
そろそろネタも尽きてきてるところかな。
─────────
「……化け物。」
怯えた目でレミリアが呟いたのは、僕が一番恐れていた言葉。
あぁ、知られたのか。
そう思った途端、あの絶望を思い出して───
「あ、あああ、あ。」
僕は、声にならない声をあげた。
言い訳をしたいけれど、どうしても言葉が繋がらない。
彼女達には、知られたくなかった。こんな自分は、見てほしくなかった。
「………『閉界』」
しばし考えた後、僕は『ロスト・エデン』を解除し、レミリアを外へと出して──
「えっ、優都待ちなさ──」
「神域『ロスト・エデン』」
自分だけを結界に閉じ込めた。
突きつけられた現実から逃げるために。
この結界は、外から干渉することは絶対に不可能なもの。
それ故に、僕はこの狭い空間で閉じ籠ってしまおうと思った。
結局、僕は臆病なのだ。
こんな狂った人間が、彼女達と共にいつまでも過ごせるだなんて願いは、儚く潰えることくらい分かっていた。
それでも、抱かずにはいられなかったのだ。
「……化け物だな、僕は。」
狂気の化け物。過去のことはどうであれ、今の僕はそうだった。
『妖怪』と言っても、彼女達は人間と大差ない。
だが、僕は違う。僕は、『人の身でありながら、異常なまでに狂っている』のだ。
「あはは……。なかなか、辛いものだな。レミリアに言われたんだから、尚更か。」
自然と、頬に涙が伝う。
自分は、脆いのだ。簡単に崩れて、簡単には直らない。
──────────(view side Remilia)
言ってはならなかった。言うべきではなかった。
彼が、何か私達に隠していることは知っていた。
あの時の彼は、本当に『過去の私』のような顔をしていた。
「……ゆう、と。」
「あら、貴女はこんなところで何をしているのかしら?」
突然、背後から声をかけられる。……この声、それは──
「どうしてこんなところに居るのよ、スキマ妖怪。」
紫だ。力なく座り込んだ私を、呆れたような顔で見下ろしている。
「質問に質問で返すのはよくないんじゃなかったかしら?」
……まぁ、紫が来ているのも当然だろう。
霜月花梨と言ったか。あの少女が私の身体を乗っ取った時に使った、過去に封じたスペカのせいで、空が瘴気で埋め尽くされていたのだ。
異変だと考えるのが妥当だろう。
「……その結界の中、優都が居るのね?貴女、彼に何をしたの?」
「……私のせいよ。全部が私のせい。空が瘴気で埋め尽くされているのも、優都が結界に閉じ籠ってしまったのも。」
私は、紫に先程の出来事を細かく説明した。
説明し終えると──
「……こうなった理由は分かったわ。その上で、言いたいことというか、少し良いかしら?」
言い終わるか否かのタイミングで、乾いた音が響く。
少し遅れて、頬に痛みを感じた。
紫が私の頬を叩いたのだと分かるまで、少し時間がかかった。
どうも、霊夢よ。
あら、なかなか珍しい展開ね。
これ、どうやって優都を結界から出すのよ。
紫のスキマでもダメなんでしょ?
まぁ、うちの作者のことだから、その辺もちゃんと考えてるでしょうね……?
次回までゆっくり待っていなさいよね!