第69話 業火と凍獄
どうも、魔理沙だぜ。
あれが新しいスペルカードか?
あれは完全に反則技だろ。
ん、気になるなら自分の目で見てくれだぜ。
中二病全開のネーミングだな。
結局僕に残ったのは、消えることのない不信感と、澄みきった殺意だった。
──────────
狂気に満ちた僕を、僕は意識の奥深くに封じた。
だが、封じた程度で問題は解決しない。
だから、支配した。
狂気をより壊れた狂気で塗り潰し、自らの制御下に置く。
それにより、自分の意思で呼び出すことが出来るようになった。
「そして、呼び出された過去の『狂気』が僕、というわけさ!」
「……誰と話しているのかしら、お前。」
偽レミリアが呆れたような目でこちらを見ている。
「いやいや、何でもないさ。──業火『インフェルノ』」
偽レミリアを突如、猛烈な炎の柱が襲う。
強烈すぎるほど強烈な業火。
そんな一撃を正面から受けて、偽レミリアは──
「卑怯なことするわね。まだ会話の途中だったわよ?」
何事もなかったかのように平然と立っていた。
服がところどころ裂けていて、直視しづらい姿ではあるが、ほとんど攻撃を受ける前と変わっていない。
「ふむ。会話はどうでもいいんだ。とりあえずは早く君を殺さないといけないらしくてね。……だから、さっさと死になよ、お嬢さん。」
「あらあら、随分と馬鹿にしてくれるわね。やれるものならやってみなさいよ──絶望『クルーアル・フェイト』」
偽レミリアがスペルカードを発動。それにより、偽レミリアの持っている槍が放つ瘴気がより強くなる。
『残酷な運命』か。なかなか面白そうな名前じゃないか。
まだまだ相手は余裕の表情だ。なら、もっと──
『おい。いつまで遊んでいる?早く殺せと言ったはずだ。』
「……分かったよ。今すぐ片付けるから、それで良いよな?」
『あぁ。小手調べなんてしなくていいから、さっさと消し飛ばしてしまえ。』
「あいよ、了解さ。……悪いがお嬢さん。本気でやらなくちゃいけなくなったよ。」
「……?だからどうしたの。貴方さっきからそう言ってるけど、全然強そうに思えないわね。口先だけの人?」
……あぁ。言ってはいけないことを。
残念ながら、一見強く見えないことも戦闘では大事なことなんだけどな。
「じゃあ、凍え死ねよ。──スペルカード発動。凍獄『ニブルヘイム』」
スペルカードを発動して出来上がったのは、氷と闇の世界。そこに、一つの氷像がある。
凍獄『ニブルヘイム』。
物体を完全に停止、凍結させた上で、崩壊させる。
更に、闇が精神を蝕み、その存在を抹消する。
「……うん、ごめんね。どうやら逃げられたみたいさ。僕もあちらを侮っていたということかな。」
『……まぁ、ひとまずレミリアの身体から離れたのならそれで良いさ。』
「いやはや、とんだ腰抜けだなぁ。……逃げる前にこちらの手の内を見ておくために挑発したんだろうけどね。」
なかなかに無謀なことをする。おそらくは賭けだったのだろう。
その結果逃げられたのだから、賭けはこちらの負けだ。
「とはいえ、簡単に逃がすほど僕も甘くはないさ。ちゃんと土産を渡したよ。だから、後はよろしくね。」
『ん、もういいのか?完全に殺すまで、追いかけても良いんだぞ?簡単だろ?』
「んー。いや、良いよ。そんなに簡単に殺したら、僕が面白くないからね。」
……とことん狂ってるね、僕ってヤツは。
後は、芽が出るのを楽しみにしておこうか。『アナザー』の大切な人に手を出した罰、だからね。
どうも、霊夢よ。
あんなの食らったら死ぬわよ。
まぁ、殺すつもりで撃ってるから当然でしょうけど。
でも、ますます分からなくなってきたわね。
今の優都は何者?どうしてあんなものを使えるの?
このことも、そのうち分かるかしら。
次回までゆっくり待っていなさいよね!