第68話 信じられぬ者
どうも、魔理沙だぜ。
ん、結局花梨はどうなったんだろうな?
この次で明かされるみたいだが。
楽しみにしてるといいんだぜ!
──────────(view side Yukari)
「……あら。幻想郷最強の妖怪であるこの私を通さないなんて、どういう結界かしら、これ。」
空を緑色の瘴気が覆い尽くした直後に博麗神社にやって来た私を待っていたのは、巨大な結界。
仕方なくスキマから通ろうとしたが、掻き消されてしまった。
「……飛んで裏側から回るしか無いみたいね。」
神社自体を囲んでいるわけではなく、神社の階段から境内付近までなので、神社に入ることが出来ないわけではない。
けれど───
「おそらく、優都が作ったものね。人間の張った結界を破れないなんて、なんだか悔しいわね。」
いや、それよりも。
彼は一体何者なのか。
今は特に問題視されていないが、まだまだ信用に足る人物ではない。
それに、これほどの力を持つ者。
優都のこういった力は、とても『人の心を読む』なんて能力を持っていることで説明できるものじゃない。
おそらく、本当はもっと強大な能力を持っている。それこそ、この幻想郷を滅ぼしかねないほどの。
「でも……そんな力を持つからこそ、今は手を出さない方が良いのね。」
万が一にでも暴走したりしたら、それこそ確実に幻想郷は崩壊する。
「……様子見、かしらね。」
───────────
理解されない。分かってもらえない。
僕が何なのか。何を考えているのか。どういう人間なのか。
『お前のことなんて、何一つ、ちっとも分かんないんだよ!』
ひどく、胸に突き刺さった。
昔、街中でナイフを振り回していた暴漢を竹刀で倒したことがあった。
僕の一撃は相手の肋骨を折り、その肋骨が相手の肺に刺さり……。
その男は、死んだ。
救急車を呼べば、助かった。けれど、誰もそうしなかった。
僕は、連絡する手段を持ち合わせていなかった。
家に戻ろうにも、暴漢が逃げないように見張る役目があったから動けなかった。
襲われていた人達は、皆怯えた目でこちらを見るだけで、誰も救急車を呼ぼうとしない。
代わりに彼らが呼んだのは、警察だった。
助けに入った僕を、『人殺し』として突き出したのだ。
その後、僕は正当防衛ということで終わったが、『人殺し』と呼ばれることに変わりはなかった。
昔、僕が助けようとした少女を思い出した。
彼女とは違う、本当の人殺しとして忌み嫌われる。
これが、救った先に得られた結果か。
礼なんて、求めてなかった。
けれど、この仕打ちは本当に悲しいものだった。
それが。裏切られた記憶が、僕を容易く狂わせた。
狂う。狂う。狂って狂って、僕は人を殺す。
誰も信じない。誰も信じられない。
どうせ、裏切るんだ。みんな、みんな。
だから僕は、誰かに裏切られる前に、僕が裏切ることにした。
どうも、霊夢よ。
優都の過去、本当に色々ありすぎよ………。
困ったものね。聞いたところだと、裏切られた記憶ばかりみたい。
いつ、優都は過去から解放されるのかしらね。
次回までゆっくり待っていなさいよね。