第66話 狂える者と愛す者
どうも、魔理沙だぜ。
優都が……少し怖いんだぜ。
あいつにはまだまだ謎が多すぎる。
この先でどういう関係になっていくんだろうな。
──────────
「くっ、何よここ!早く私をここから出しなさい!さもないと───」
「さもないと……何だ?」
少し怒って睨んだ程度で、僕が怯むと思っているのか?
こいつは、レミリアじゃない。
敵、敵だ。……殺しても、良いんだ。
さぁ、思い出せ。
肉を斬る感触を。ドス黒い血を。心地良い悲鳴を。
あぁ、今だけお前にくれてやる。この身を、この心を。
狂え、狂え、狂え。
こんな偽物じゃなく、本物の『狂気』を見せてやれ。
「ひっ───」
偽レミリアが小さく悲鳴をあげる。
今更気づいたって遅い。
そう。僕はこいつより格段に、圧倒的に──
「あははははははは!どうしたのさ、早く始めよう!殺し、殺され、血みどろに!絶望を絶望を絶望を絶望を絶望をッッ!!」
狂っている。
──────────(view side Remilia)
……私は、どうしてこんなところに?
目が覚めたこの場所は、『あの日』だった。
私が、最も思い出したくなかった記憶。狂気の記憶。
「どうしてこんなところに──と、言わなくても分かるわね。」
私をこんなところに閉じ込めたのは間違いなく、霜月花梨と名乗ったあの化物だ。
あれは、明らかに人ではなかった。
姿形、外見は人間のそれだ。
けれど、中身は違う。上手く言えないが、あいつからは人間どころか妖怪すら凌駕するほどの莫大な『負』を感じた。
「……結局は、優都に任せるしかないのね。本当に、悔しいわ。」
悔しい。無力な自分が悔しい。
未だに過去の幻影に振り回されている自分が悔しい。
強くなりたい。優都に守られるだけの私は嫌。
───ふふふ。だから貴女は弱いのよ?
視界が突如暗闇に閉ざされる。
何も見えない。けれど、そこに『在る』。
私は、『それ』を殺意で射抜く。
「……どういう意味?」
───強くなりたい。彼に守られるだけなのは嫌。そんな風に言ってるヤツは幾らでも居るのよ。
過去に囚われた貴女が、そう簡単に変われると思うのかしら?
「それは……でも、それと私が弱いことに関係なんて──」
───貴女は過去に囚われているんじゃない。自分を悲劇のヒロインとして見てほしいだけ。
本当は過去なんて、簡単に斬り捨てられるのに。
「違うっ!!」
───いいえ、何も違わないわ。貴女は彼に気にしてほしいだけ。
『自分は過去にこんなことがあって苦しんでます』って言って、彼に同情してほしいだけ。
違う!私はそんなこと思っていない!
確かに、彼にはもっと私を見てほしい。私だけを見ていてほしい。
でも、彼に同情してほしいわけじゃない。
「私は、彼の隣に立って戦いたい。彼に守られるだけなのは嫌!」
そんなのは。守られるだけのお姫様なのは、嫌。
私は、彼の隣で戦える仲間になりたい。彼の背中を守れるくらい強くなりたい。
私は───
「彼が好きだから!」
どうも、霊夢よ。
あれは……優都なの?
今度はどんな無茶なことをするつもりかしら。
『無茶はしないで』って言ったのにね。
次回までゆっくり待っていなさいよね!