第57話 悔夢異変
どうも、魔理沙だぜ。
なんだかまた雲行きが怪しくなってきたな。
異変が起こるのか?
私も続きが気になるんだぜ!
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その異変の予兆は、酒宴から一月も経たぬうちに現れ。
僕達がもう一度異変解決に駆り出されるまで、そう時間は掛からなかった。
もしその異変に、名を授けるなら。
僕はこう、名付けるだろう。
───『悔夢異変』と。
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酒宴から一週間。『影』がまた現れた、などの報告もなく、平和が広がる幻想郷。
霊夢によって命名された、通称『境界異変』は、ようやく終わりを迎えたようだ。
ミカヅチは、あれからまた眠りについた。
僕が呼べば起きるのだが、緊急時や頼み事がある時以外、ほとんど呼び出すことはない。
「あいつに頼み事をすると面倒だからなぁ。あいつの求める代価って、ある意味『命』を代価にするより厄介だし。」
スキンシップって言っても、あんまり過剰なのは正直勘弁してほしいところだ。
いくら人間ではないとはいえ、姿形は普通の女の子なのだ。
健全な男としては、色々と考えることがあるわけで。
「僕の理性は鋼なのであって、オリハルコンではないんだけどな。」
僕だって、そういうことに興味がある。男なら当然だ。
だからこそ、過剰なスキンシップは抑えてほしいのだ。
もし、襲ったりしたら───
「受け入れそうなのが、あいつの怖いところだなぁ。」
いくら鋼の理性とはいえ、限界はある。
ネジが飛んだら流石に抑えが効かないぞ。
……うん。この話はこれくらいで終いにしよう。
今はそんなことよりも、だ。
「あれから、レミリアのことがずっと気にかかってるんだよなぁ。」
こうしてみて分かるのだ。
僕は、彼女達のことを全く知らないのだ。
どういう経緯でここに居るのか。
どんな能力を持つのか。
どんな過去を過ごしてきたのか。
何も、知らない。
それは、僕が信頼に足る人間でないからか。
それとも、信頼に足る人間にすら、話したくないようなことなのか。
「まぁ、こっちに来てからまだ一ヶ月くらいだもんな。」
自分のことなんて、出会って一ヶ月程度の人間に軽々しく話せるようなことでもない。
何処から来たのかも分からないような奴を、たった一ヶ月で全面的に信じられるほど、お気楽な性格などしていないだろう。
「……隠してることなら、僕の方にもあるけどね。」
むしろ、彼女達よりも僕の方が隠し事が多いかもしれない。
まだ、全てを語る時じゃない。
話すべき時が来れば、あるいは。
「それに……自分に関して分からないことだって、山ほどあるんだろうからな。」
何度思い返しても、幾度言葉を繰り返しても。
結局は、何一つ分からなかった。
……だから。
「『自分』を知ってから、伝えることにしようか。」
───僕のことを。自分が何者なのかを。
どうも、霊夢よ。
なんだか、また新しい異変の予感ね。
……最近、話すことがなくなってきたみたい。
次回までゆっくり待っていなさいよね!