第54話 酒宴の後は
どうも、魔理沙だぜ。
酒宴は楽しいんだけど、二日酔いが辛いよな。
幻想郷では、酒なんて子供からでも飲めるんだぜ。これはオリジナル設定だけどな。
あ、酒に強いとか弱いとか、そういう設定もオリジナルだぜ。
──────────(view side Mikazuchi)
あの頃の主様は、黒く濁った色の瞳でこちらを見ていた。
「僕は優都。神無月優都だよ。よろしくね、ミカヅチ。」
彼が、『神降ろし』。
どれほどの人間なのか見物に来たのだが、予想よりを遥かに越えていった。
強い。彼は本当に強い。
神の子であるところの私が、簡単に殺される。
それほどの実力が、幼い彼にはあった。
隙が無さすぎる。
周囲を警戒し、どこから狙われても対応できるように構えている。
飄々とした態度でも、敵を殺すために最善の動きをとれるように警戒を怠らない。
その歳で、どうやってその域に辿り着いたのか。
下手に動こうものなら、一瞬で命を刈り取られるだろう。
「汝、どうやってそこまで強くなった?」
「聞いてよ、ミカヅチ。僕ってね───」
その時の主様の言葉に私は、彼が何処か遠くへ消えていってしまうのではないかと、身を引き裂かれるような感覚に陥ったのだ。
──────────
目覚めたのは、広い和室だった。見覚えのある部屋。
見覚えのある和室なんて、博麗神社以外に無い。
「そう、だ。昨日はあれから、宴会をして、みんな酔い潰れたのを放って一人で寝たんだったっけ。」
昨日の宴会は、それはもう大盛り上がり。みんながみんな酔っていて、誰も止める人がいない状態だった。
広間に行ってみると、酒瓶が転がり、何人かが寝ていた。
荒れ放題だな、ここ。
何人か目覚めた人も居るようだ。ほとんどが二日酔いでぐったりしているが。
「あら、優都?」
「え、レミリア?目が覚めたの?」
広間の襖を開け放つと、酒瓶を片付けているレミリアを見つけた。部屋には霊夢に魔理沙、紅魔館組が寝ている。
「あぁ、手伝うよ。レミリアも、昨日は結構な量を飲んでたよね?」
「ふふっ。私はお酒に強い方だから良いの。この程度でそんなに酔ったりはしないわ。」
確かにレミリアは全然酔っているようには見えない。
なんだか意外だな。レミリアはすごく酒に弱そうなイメージがあったんだが。
逆に言えば、紫が割と酒に弱かったというのが意外だった。
ちなみに、その紫は今、うつ伏せになって寝ている霊夢の横に、同じくうつ伏せで寝ている。
……あの二人に何があったんだろう。
「レミリアが酒に強いってことは、フランも?」
「いいえ。あの子はそもそも飲めないわ。」
「それは、年齢で?」
「そんなわけないでしょう?あの子、物凄く酔いやすいのよ。なんなら、一度飲ませてみる?」
いや、飲めないと言ったのはレミリアだろう。どうなるのか気になるからそういう誘いはやめてほしいのだが。
「フラン?ちょっと来てくれない?」
「……あれ、お兄様とお姉様?どうかしたの?」
ちょうど向こうの広間を片付けていたフラン。
……やめた方が良いとは思うが、気になるな。
「ふふふ……えいっ!」
「────んむっ!?」
酒瓶に少しだけ残った酒を、レミリアがフランの口に無理矢理流し込む。
「あぁ、それは流石にやりすぎなんじゃ……」
「まぁまぁ。さあ、もうすぐ始まるわよ?」
レミリアがそう言って悪戯っぽく笑った直後。
『何か』が僕に飛び付いてきた。
どうも、霊夢よ。
フランはだいぶ酒に弱いって聞いてるけど、
飲ませたらどうなるのかしらね。
暴れだされたりするととんでもないけどね。
次回までゆっくり待っていなさいよね!