第53話(第1章END) 代価の代償
どうも、魔理沙だぜ。
今回は、少しのコメディとシリアスで構成されているぜ。
異変は解決しても、まだまだ問題はあるようだぜ?
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「なるほど、あれは必要な行為だった、と?」
「そうですっ。あれは私の紡ぐ言霊を主様の身体に直接送る必要があったからで。」
ほほう。それはそれは。
「で、本音は?」
「主様ってば、代価の件を放置するんですもん。だから、理由を付けてキスを頂きました!」
人、それを私欲と言う。
結局自分の欲望じゃん。もはや助ける気ないだろ。
「で、でもでもっ!本当に必要なことなんですよっ!?」
「へぇ、じゃあこうして抱きついてるのにも何か意味があるって言うのか?」
こいつはこうして話している間も、ずっと僕にくっついている。
背中に抱きつこうとするな。背後霊か何かかお前は。
「そ、それはあ───」
「ついでに言えば、さっきの二回目のキス。あれは必要だったのか?」
「う、うぅっ………」
間髪入れずに問いただす。ミカヅチは『ぐぬぬ……』とでも言いたげな顔で唸っていた。
「ぐぬぬ……」
……『ぐぬぬ』と唸っていた。
それはもう、これ以上ないくらいの『ぐぬぬ』で唸っていた。
何を言ってるのか分からなくなってきたな。
閑話休題。
「まぁ、とりあえずあの声は聞こえなくなったな。治ったのは本当か。」
ミカヅチからキスされた直後に、意識が書き換えられていくのを感じた。
あれは治癒の言霊の影響か。
「あ、治癒の言霊は私にしか使えませんよ?」
「そっか。便利だと思ったんだけどなぁ。」
そんな力があれば、怪我なんて簡単に治せるのに。
……いや。そんな力に代償が無いわけがない。
つまりは───
「ふふっ。お察しの通り。この力には代償がありますよ。『生命』という代償が───」
『生命』が代償。
そう聞いたとき、僕は反射的に彼女を抱き締めていた。
「ちょっ、何してるのよ優都っ!」
「あら、優都もなかなか大胆ね。霊夢が嫉妬しちゃうわよ?」
周囲が何やら話しているが、どうでもいい。関係ない。
怒り。
それは、ミカヅチにではなく。
僕自身に向けた怒りだ。
最低だ、僕は。
どうして、そんなことにも気づかない?
どうして、僕を助けてくれた彼女に向かってあんなことを言えた?
本当に最低だ、僕は。
「えと、あの。主様……?」
「……もう、使わせない。僕がどんなにボロボロになっても、絶対に使っちゃダメだ。」
「ですが、もともと神に創られた私に寿命なんてものはありませんし、主様のお役に立てるのならそんなことは──」
「絶対に使わせないっ!絶対に、使わせたりしない……。」
騒いでいた周囲に、静寂が満ちる。
分かっている。全ては僕の我儘だ。そんなことは、他でもない僕が一番よく分かっている。
けれど僕は。僕はそんな我儘を言ってでも───
彼女を失いたくないのだ。
「はい!優しい私の主様♪」
僕をあの暗闇の檻から連れ出してくれた、その可憐な笑顔を。
どうも、霊夢よ。
今回は、ミカヅチの優しさがよく分かるわね。
主を慕うが故の行動、かしら。
優都もおかしなヤツね。
自分の身は犠牲にしておいて、他人が自分の為に犠牲になろうとしたら怒るんだもの。
……それが優都の優しさなのでしょうけどね。
『優都と僕が似てない部分だよね!』
とか、作者が言ってたわね。
まぁ、自虐することでしか自分の存在を確認できないようなヤツは放っておきましょう。
次回までゆっくり待っていなさいよね!