第52話 そして彼女は口づけを
どうも、魔理沙だぜ。
いきなり気になるサブタイトルだな。
今回はお子様の教育に悪いぜ?
小学生の皆は見ないことをおすすめするんだぜ。
もうちょっと大人になってからにしような。
──────────
「君は……誰?」
「ん、我か?我はミカヅチ。汝に武御雷の権能を貸し与える為の媒体、といったところか。」
そう。彼女は普通の人間ではなく、神から与えられし生を受けた──
「神の娘。そういう意味での『神子』だな。」
神子。彼女の場合は、『神の子供』。
その力は、その姿は、神により創られしもの。
そう告げて、彼女はひどく寂しそうに、笑う。
その表情が、胸を締め付けた。
人間ではないこと。神によって創造され、強大な力を持つが故に孤独だったこと。
それが彼女を苦しませていることが、悲しかった。
だから、だから僕は
───『書き換えた』。
──────────
「主様?どうかなさったのですか?顔色が優れないご様子ですが。」
視界に闇が広がる。星々と満月に照らされるこの夜に戻ってきた。
ミカヅチが心配そうにこちらの顔を覗き込んでいる。
周りに目を向けると、先程まで集まっていた紫達がそこにはいた。
「あはは、大丈夫だ──うぁっ!?」
───助けて!
また、だ……!
強い感情が、頭の中に流れ込んでくる!
───死にたくない!
なんだ、これ!
何かが、見える。
自分の知らない記憶が、頭の中で再生される。
何かが、僕の身体を、意識を
───『侵蝕』する。
「ど、どうしたのよ優都!?しっかりしなさい!」
───消えたくない!
「だ、まれ……黙れぇぇぇぇぇぇッッ!」
腰に差していた『陽炎』を抜き放ち、足を突き刺す。
深々と突き刺さり、貫通し、勢いよく血が吹き出す。
朦朧としていた意識が、『痛み』によって目覚め、意識を激痛が埋め尽くす。
まだだ、まだ足りない!
まだ、『あいつ』を追い出せていない!
「な、何をしているのよ優都っ!やめて、やめなさい!」
「……どいてください。」
足を貫通した『陽炎』を抜き、今度は腕へと──
「其の身傷つけること能わず。言の葉よ、治癒の祈りを纏いて、邪を滅し給え。」
その刃は、腕に鋭い痛みをもたらすことはなかった。
代わりに訪れたのは、唇への柔らかい感触。
唇からその中へと、柔らかいものが入り込む。
電撃が頭の中を駆け巡り、意識を書き換えていく。
目を開けたとき、その瞳に映ったのは、黒髪黒瞳の少女の顔だった。
「な、ななななな、な。」
その後ろでは、霊夢が顔を真っ赤にして口をパクパクさせ、なんとか言葉を紡ごうと頑張っている。
「あら、その子なかなか大胆じゃない?」
紫がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべてこちらを見ている。
真っ赤になってこちらを見ている者、見ないように顔を背けている者、目を輝かせて見ている者。
と、いうか。
なんだか、暖かくて。
見てみると、足の傷がまるで初めから無かったかのように塞がっていて。
「……お前が、治してくれたのか?」
永遠にも感じるほど、長く永い口づけの後。
口づけの感触を確かめるように唇を細い指でなぞっている彼女は──
「ふふっ。今回の件の代価、しっかりと受け取らせていただきましたからね♪」
そう言ってまた、突然に僕の唇を奪っていった。
どうも、霊夢よ。
作者のヤツ、
『キスどころか手を繋いだことすらないのに、どんな感じかなんて分かるわけないじゃん。』
とか言ってたわね。
まぁ、あんなのに恋人が出来るようなら、
その日のうちに人類は滅亡でもするんじゃないかしら。
次回までゆっくり待っていなさいよね!