第49話 我が主様
どうも、魔理沙だぜ。
あの子、何者なんだ?
優都とは何だか知り合いみたいだったが、
どういう関係なんだろうな。
その話は、次回、またはその次に語られることになると思うぜ。
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あの日。父さんと母さんが死んだあの日。
僕のもとに舞い降りたのは、雷光を纏う少女だった。
黒髪黒瞳で、着物を着た少女。祭りをしているわけではないのだから、こんな格好で居る人は普通、いないだろう。
現実を遥かに超越した、有り得ない出来事。
「汝が、我を降ろしたのか?」
彼女は問う。
鈴を転がすような声。
「……どうしたのだ?汝、その瞳の色は?」
彼女が近付いてくる。
纏う雷が、バチバチと音を立てる。
「……心配は要らぬ。我は汝を傷つけたりせぬ。おお、名を名乗っておらんかったな。」
ふっと微笑んで、彼女は僕から一歩離れ──
「我は─────」
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以前『降りた』のは、いつだったろうか。
いくら代価が嫌だからとは言え、流石に薄情だ。
「……主様はご自身も強いのだから仕方ないことではあるのだがな。」
それにしても、だ。
我とて寂しさは感じるのだ。少しくらい、主様に構ってほしいものだ。
「ふむ、あれか。……主様以外の者を守るというのは些か不満であるところだが──」
──他ならぬ主様の頼み事なのだ。必ずややり遂げようではないか。
出会ってから今までの十年以上もの長い間、片手の指で足りるほどしか助けを求めなかった主様の、本当に珍しい頼み事なのだ。
「まぁ、代価はしっかりと頂くからな、主様♪」
滅多に頂けない褒美の為に、我は『影』とやらに剣を向ける。
斬禍剣『布津御魂』。主様から頂いた剣で、圧倒的な力を誇る霊刀だ。
もっとも、主様は覚えていらっしゃらないのだろうが。
「貴様ら如き畜生共に、我が主様が傷つけられたのかと思うと、 腸が煮えくり返りそうだな。」
瞳に殺意を宿す。
主様から、『大切な人達を傷つけなければどうやって殺しても構わない』と言われている。
「ふふ。悪いが、我は面倒くさいのが嫌いなのでな。早々に──」
──焼き殺させて貰おうか。
刹那。晴れ渡る空から突如大地を貫く霹靂。
その 一条の光は、『影』だけを飲み込んで消滅させる。
ほんの一瞬。その一瞬で、何百、何千と居た『影』は、跡形もなく消し飛んだ。
「我は、ミカヅチ。貴様らを殺した者の名、覚えて逝くが良い。」
瞳から冷酷な光が消える。
あまりにも呆気なく失せたもので、少々物足りないが。
「我が主様に傷を付けた罪、そう易々と償えるものと思うでないぞ。」
……話す知能もない異形如き相手に、流石にやり過ぎたか。
人間共が我を見ているが、興味は無い。
我が興味を持っているのは、主様ただ一人だけだ。
「……主様からの頼まれ事はやり遂げた。さて、代価を受け取りに行こうか。」
我が主様の願いを聞き届ける際に、代価として受けとるのは──
「───『主様』だな♪」
どうも、霊夢よ。
ミカヅチ、ね。
とんでもなく強いわね、あの子。
それにしても、あの『代価』って何なのかしら。
おそらくは、次で語られるでしょうね。
次回までゆっくり待っていなさいよね!