第41話 もう一人の
どうも、魔理沙だぜ。
あれから、優都はどうなったんだ?
無事、なのか………?
──────────(view side Reimu)
崩れ落ちる優都の身体を、私は呆然と見ていた。
音もなく空の彼方から優都を突き刺した黒い槍。
気づいた時にはもう遅く、誰一人として動くことが出来なかった。
声が出ない。身体が動かない。
金縛りにあったかのような感覚。
ようやく動けるようになって、初めて出たのは、声ではなく涙だった。
「あ、あ……あ。」
遅れて出てくる声。
途切れ途切れで、上手く言葉が繋がらない。
優都の一番近くに居たレミリアは、優都の隣に崩れ落ちて、優都を見つめている。
瞳には光が宿っていない。
どうして、どうして。
どうしようもない問いが繰り返される。
「あ、あぁぁぁっ!」
悲しみの声は、やがて憤怒と殺意に満ちる。
これは、偶然じゃない。明らかに、優都を狙っていた。
なら、誰が?
いや、誰であろうと関係なんてない。
殺す、殺してやる。
──────────
暗く、暗く、音のない世界。
何も映らない冷たい世界。
あぁ、ここが死後の世界か。
そうか、『無』の世界に辿り着くのか。
……いや、『無』ではない。
「……誰だ、お前。」
暗闇で、何一つ見えない。音もしない。
けれど、そこに『在る』ことだけは、何故か分かった。
『僕かい?そうだな。君は、誰だと思う?』
「質問を質問で返すなよ。お前……『僕』か?」
なんとなく、なんとなくだ。
そんなはずはないと分かっているはずなのに、どうしてかそう言ってしまった。
『なるほど、ご名答だ。僕こそ、君だよ。』
「……は?いや、何を言うんだよ。『僕』が二人居る、とでも言うのか?」
何を馬鹿げたことを───とは、言えないな。
吸血鬼やら魔法使いやらがあちこちに居たんだ。
自分がもう一人居る、くらいどうということはない。
『くくっ。僕はお前の欠片。ただの一部分にすぎないさ。』
僕の……欠片?
「何だよそれ。結局、お前は僕の何なんだ?」
どうもはっきりしない。
こいつの言い方は回りくどい。
『ふむ。簡単に言おう。僕は君の能力だ。』
……は?僕の、能力だと?
僕は今、自分の能力と会話しているのか?
「それだけじゃ、イマイチ要領を得ないな。僕の能力って、具体的には何なんだよ。」
『悪いね、それは教えられないよ。それを今教えることは、どうしても出来ないんだ。』
姿は見えないが、もう一人の『僕』は、申し訳なさそうに言った。
「そうか。なら、話せるようになったら、話してくれ。」
『……あぁ、代わりと言ってはなんだが、君にこの能力を使ってあげよう。』
「え、それってどういう──」
ことだよ、と言い終わる前に、目の前に『在った』その姿が、遠のいていった。
そして僕は、目を覚ます。
どれほど時間が経ったのだろう。
───この能力を知って、それでも君は、前を見ていられるかな?
去り際に、そう声が聞こえた気がした。
どうも、霊夢よ。
もう一人の優都、ねぇ。
姿形は分からないんだから、声と口調が似てただけ、とか?
この謎もそのうち解けるわ。
次回までゆっくり待っていなさいよね!