第39話 似ているからこそ
どうも、魔理沙だぜ。
優都と妖夢の戦いが決着するぜ。
さぁ、どっちが勝ったんだろうな……。
「むむ。やりますね。」
「そっちこそ。油断できなかったよ。」
同時に剣を止め、同時に後方へ跳躍。
鏡合わせのように剣を構えなおす。
「スペルカード発動!
転生剣『円心流転斬』」
高速で襲いかかってくる無数の剣撃。
だが────
「悪いけど……それじゃあ遅いな。」
その剣撃全てを避け、流す。
彼女は、剣の太刀筋を全て頭の中で考えている。
どうすれば相手の動きを封じられるのか、どう動けば相手に攻撃を当てられるか。
それらを全て頭の中で処理しているからこそ、僕は彼女の攻撃を避けられた。
「第三刀技『朧散月』」
軽く後方へ跳躍してから間髪入れずに肉薄。
妖夢は少し反応が遅れている。先ほどの攻撃を全て防がれたのがよほど驚きだったのだろう。
その隙を見逃すほど僕は甘くない。
正面からの袈裟斬り。
「くっ………う!」
辛うじて防ごうと剣を振るう。
だが─────
甘いな。まだまだ動きが読めていない。
身を翻し、高速で妖夢の背後へと回り込む。
そして──
「………ッ!かはっ……」
足を絡めとり、妖夢の身体を地面に叩きつける。
胸を強く打ったか、軽い咳を繰り返す。
『朧散月』。相手に肉薄し、相手が防御に移ったタイミングで高速で背後をとる。
剣術とは言い難いが、立派な技の一つだ。
「悪いっ。加減間違えたか……?」
「けほっ。……いえ、平気です。まさか、能力も使わない人間に負けてしまうなんて。」
少しよろめきながら立ち上がる妖夢。
剣の扱いには自信があったのだろう、悔しそうだ。
「まぁ、能力のおかげ、って部分もあったよ。」
「でも、ほとんどは剣の腕ですよね。どうやってそこまで強くなったんです?」
……どうやって、か。
「例えば……。毎日、 血反吐を吐くくらい剣を振り続けて、 死んだほうがマシだと思えるくらいに毎日ボロボロになったとして、 それでも君は強くなりたいかい?」
傷ついても、何度血を吐いても。自分の身体がどうなっても、ただ剣を振るい続けた過去。
おそらく今の僕は、 自分で思っている以上に険しい表情になっていると思う。
「 ……そうまでして、強くならなくてはいけない理由がある、と言ったら?」
妖夢は臆せずに正面から聞いてくる。
そう、か。彼女も何か守りたいものがあるんだろう。
口に出していなくてもそう思わせるほどの真剣さが、彼女の瞳にはあった。
「 ……正直に言えば、これはやめたほうが良い。 こんな危うい強さは、 いつか身を滅ぼすだろうから。」
彼女には……僕と同じ道を辿ってほしくない。
昔の僕に似た危うさがあるからこそ、そう強く感じた。
「なるほど。……ふふ、合格です。私の力を貸します。」
「……そうか。よろしくお願いするよ、妖夢。」
ようやくまっすぐ立った彼女に、手を差し出す。
すると彼女は、愛らしい笑顔を浮かべて───
────こちらこそ、優都。
と、剣を振るうのに似合わない小さな手で、僕の手を握った。
どうも、霊夢よ。
優都は元から強かったわけじゃない。
それこそ、死んだほうがマシだと思えるほどの努力を重ねてきているのね。
守りたいもの。優都の守りたいものって、
一体なんなのかしらね。
次回までゆっくり待っていなさいよね!