第36話 闇夜の粉雪
どうも、魔理沙だぜ。
サブタイトルの意味は、読んでみたら分かると思うんだぜ。
本当に……ここから異変はどこに向かうんだろうな。
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さぁ、帰ってまいりました博麗神社。
うん、帰ってきたのは別に良いんだ。
良いんだけどね。
「ここに居ても、『影』に襲われないって保証はないんだけどね。」
「………あ。それは確かに。」
今気づいたのか。というか、それを考えずに逃げてきたのか。
「……優都。ごめんなさいっ!」
「……何を謝るんだよ。お前は別に悪くないじゃないか。」
「でも……でもっ!」
「良いんだよ。というか、僕が悪い。ごめん、また使っちゃった。」
さっきより酷い状態になった。
今も全身から血が抜けていくような感覚がある。
流石にこれ以上使うのは危険だろう。
「それこそ、何を謝るのよ。優都は悪くない。私が悪いのよ。私の自分勝手な気持ちを押し付けてただけ。」
「……いや。確かに僕は自分のことを見てなかった。自己犠牲が過ぎたな。」
やはり、『偽善』を押し付けただけだった。
誰かを救う為じゃない。自分に救済を与える為に。
「それでも。……ありがと、優都。私達を守ってくれて。」
……感謝、感謝か。
何年も人を救ってきて、何度も壊して、何度も怯えられて、やっと得られた感謝。
人から感謝されるのも、悪くないものかもしれないな。
ずっと、ずっと背負ってきたのだ。
理由のない理不尽を。
心ない言葉を。
『ありがと』。霊夢が言った言葉で、何だか軽くなった気がした。
「あはは……。僕の背負ってたものって、こんなに重かったのか……」
「ふふ。貴方は何もかも自分だけで背負いすぎ。たまには誰かを頼りなさい。私たちなら、その重荷を少し一緒に背負ってあげるくらい、出来るのよ?」
───あんまり馬鹿にしないで。
と、レミリアが笑う。
レミリアには、敵わないな。
その華奢な身体で、紅魔館の主という立場でありながら、まだ人の荷を背負おうと言うのか。
「……いいや。これは僕が背負うべき荷だ。誰かに背負わせるつもりはないよ。」
「………そう。残念ね。」
そう口にする言葉とは裏腹に、満足そうに頷くレミリア。
そう、そうだ。
これは、僕が背負うべき荷だ。
誰かに背負わせるなんて無責任な真似は、
彼女達を失望させるだけだ。
「……でも。無茶だけはしたらダメよ。あんたが犠牲になることを、私達が望むと思うの?」
「……そう、だね。」
本当に……そうだ。
誰かの犠牲の上で成り立つ平和なんて、彼女達が望むはずがない。
「さぁ、中に入るわよ。対策でも話し合いましょう。」
「そうね。今回の異変は強いようだし、もっと多くの協力が必要かもしれないわ。」
霊夢とレミリアが神社の中へと消えていく。
「……犠牲になったり、しないよ───」
────今は、まだ。
その声は、肌寒いこの夜に降り始めた粉雪のように、
闇へと溶けて───消えた。
どうも、霊夢よ。
久しぶりに後書きに帰ってきたわ。
次回は、異変解決に向けて話し合いを始めた私たちのところに、
もう一人の巫女が思わぬ情報と共にやってくるわ。
もうそろそろ異変も解決へと向かい始める。
次回までゆっくり待っていなさいよね!