第35話 無茶はしないで。
どうも、魔理沙だぜ。
私とアリスの出番はどこにいったんだぜ?
作者が言うには、「そのうち」らしいが。
結局いつなんだよ。
─────────
「……『桜吹雪・御雷』」
雷を纏う刃が乱れ舞う。
周囲の数体が消え失せるが、まだまだ足りない。
「……第四刀技『刃殺・紫電』」
今度は放たれた雷が地を駆け回る。
またも数体が消え失せるが、それでは足りない。
いくら雷を扱うとはいえ、こんなものなのか。
………それならば。
僕は、『イマジネート・クリエイション』で、小さな鉄球を創造する。
「『EML』………バースト。」
神降ろしした状態で使える
大量殲滅技その1。
というか、ただの文明の利器。
電磁誘導を用いて高速で物体を撃ち出す。
……ただのレールガン。
対人では使わないから、滅多に使う機会はない。
これにより、一直線上の『影』を消滅させられた。
が、それも束の間。
どんどん湧いてきて、減るどころか増えている気すらする。
「あはは、本当にしつこいなぁ………」
顔を拭うと、ドロッとした液体を手のひらに感じた。
流石に疲労が溜まったままの状態では、そう長くはもたないようだ。
一体一体の耐久力が並外れていて、並の攻撃では倒せない。
「話も通じないんだよなぁ。」
強い上に話す知能もない。
おそらくは人を襲う為だけに動いているのだろう。
……本当に、ただの怪物だ。
少し前にも同じことを言った気がする。
正直言って、もう疲れた。
僕、人間なんですけど。普通に死ぬんですけど。
────優都ぉぉぉぉぉ!!
……何だ?頭上から、何度も聞いた彼女の声が聞こえる。
………霊夢か?レミリアまで。
「……何をしに来たんだ?」
「あんたを助けに来たに決まってるでしょうがぁぁぁぁぁ!!」
何でも良いが、元気だなお前。
レミリアも耳塞いでるじゃん。
──────────
「言いたいことは色々あるけど。とりあえずどうしたのその瞳。」
「瞳……?何かおかしい?」
「おかしいわよ、思いっきり。瞳、黒かったでしょ?」
あれ?黒くないのか?
そういえば、夜の闇の中にしてはよく見えたような。
「猫の目みたいに光ってるわね。蒼いわよ。」
「レミリアも紅いじゃん。それと同じなんじゃ?」
「私は吸血鬼だから。」
関係あるのか、それ。
「………っ!そろそろ、限界みたいだ。」
もう既に皮膚はボロボロ。満身創痍の状態だ。
とてもこの数の『影』を相手にできる状態ではない。
「優都……後でお説教よ。無茶しすぎなのよ、まったく。」
怒ったような表情を浮かべる霊夢。
だが、その声音は優しいものだった。
「優都っ!早く行くわよ!」
レミリアに手を引かれ、『影』の大群の中から脱出する。
空から見下ろすと、何百、何千という数の『影』が居た。
「あんな数を相手に霊夢一人残して大丈夫なのか!?」
「大丈夫。少しは霊夢のことも信じてあげなさい。貴方は一人で抱え込みすぎ。少しは自分の心配もしなさい。」
……そう、か。大丈夫だと言うのなら良いのだが。
「本当に……心配ばかりさせるんだから。その力はもう使っちゃダメ。分かった?」
「……そうだね。」
「さぁ、そろそろ霊夢も限界な頃だと思うし、早く逃げましょうか。」
どうも、早苗です。
優都くんが降ろした『武御雷』は、雷と剣の神。
神話の中では、雷を使う神様は位が高いのです。
その強大な神様の権能を使うが故にあそこまで大きな代償を背負うのですが……。
実は、『影』にダメージを与えられるのは、
単純に威力やスペルカードの問題ではないようです。
優都くんが『影』を倒すことができる理由は、
これから先で分かっていくようです。
次回までゆっくり待っていてくださいね。