第31話 涙の理由
どうも、魔理沙だぜ。
サブタイトルでも分かるが、今回はシリアスだぜ。
霊夢の言葉。その理由とは?
私は……知ってるけどな。
閑話休題。
「で?怪我はしてないよな?あの後、襲われたりしてない?」
「……うん。」
なんかしおらしくなったな。
霊夢らしくもない。
これはこれで可愛いけど。
また話が逸れたな。
「……優都の方は、本当に大丈夫なのね?強がってるわけじゃないのね?」
「うん、大丈夫だよ。強がってるわけでもない。」
「そう……良かったわ。」
本当に何なのこの可愛い生物。
なんかこっちをチラ見しながらしなを作ってるんだけど。
「えと………何?」
「えっ!?な、何でもないんだぜ!?」
何故に魔理沙の口調?
動揺しすぎだろお前。
心なしか顔も赤いな。本当にどうしたんだ霊夢。
「えと、あの。優都?」
「ん………どうしたの?」
………。気になるだろ、早く言ってくれよ!
「……も、もう。何でもないわよっ!」
怒られた。なんか理不尽だ。
「うん。分かった、分かったよ。早く入ろうよ。」
──────────
「……優都?これはどういうこと?」
「………いやぁ、あはは。」
「笑って誤魔化すな!」
はい、服が血塗れだったのがすぐにバレました。
上着を借りてきてたんだけど、服を着替えてなかったの忘れてたんだよ。
「この血の量……。あんたこれ、致死量に達してるかもしれないじゃない。」
「かもしれないね。」
人間の血液は体重のおよそ13分の1。
血液量が半分以下になると、失血死すると言う。
そこから考えると、僕の出血量は致死量に達していてもおかしくない。
「……かもしれないね、じゃないわよ!」
「………れ、霊夢?」
霊夢が俯いて体を奮わせる。
怒っているのか?
……いや、違う。
霊夢の瞳に映っていたのは、怒りではなかった。
代わりに僕の瞳に映ったのは、霊夢の瞳から零れ落ちる一粒の雫。
「かもしれないね、じゃないでしょ……?死んでたかもしれないのよ?」
「……そうだね。その可能性も考えたよ。」
「……優都。何があったのか、ちゃんと話して。」
溢れる涙を何度も拭って、必死に感情を押し殺しながら、霊夢が僕に言う。
僕は、一つ一つを話し始めた。
影のこと。魔理沙とアリスのこと。
そして、神降ろしの力のことも。
そして、僕が話す間、ずっと顔を伏せていた霊夢は。
「ねえ、優都。そうやって自分を犠牲にするやり方はやめて。」
そう、静かに言った。
けれど、僕には。僕にはそんなやり方は──
「……無理だ。ぼくはただの道具だ。これは変わらない。こんな怪我なんて、大したことは──」
「どうして……。どうして分からないの!?その出血量で、大したことないわけないじゃない!」
霊夢が激昂する。未だ溢れる涙を拭って。
「あんたが、優都が死んだら意味がないのよ!?」
「……どうしてだ?僕は、何処か分からない外の世界から突然現れただけの他人だろう?」
霊夢が僕をそこまで大切に思う理由が分からない。
「……なんで。どうしてここまで言っても、何も分からないのよ。」
霊夢の気持ちが分からない。
今、彼女は何を思っているんだ?
「……霊夢。」
僕は、霊夢に手を伸ばす。
けれど、その手は霊夢に届かない。
「………近寄らないで!」
そう一言、冷たく言い放ち、彼女は神社の中へと消える。
───近寄らないで。
その言葉が、ひどく心に突き刺さって。
霊夢が消えていった先を見つめて、僕は神社から出ていった。
どうも、早苗です。
霊夢さんが本編であれなので、私が代わりに呼ばれました。
優都くんの自分を犠牲にする考え方に、
激昂する霊夢さん。
その零れ落ちる涙の理由を理解できない優都くん。
すれ違う二人は、どうなるのでしょう。
次回までゆっくり待っていてくださいね。