第29話 破滅へと導く者
どうも、魔理沙だぜ。
何だか、また謎の夢が書かれたな。
気になる言葉も残していったけど。
この先、どんな展開があるんだろうな。
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どこからか聞こえる、誰かの声。
誰の声かも分からない。
ノイズが多くて、何を言っているのかも分からない。
暗闇、暗闇。何も映らない空間。
ふと、誰かの影が過る。
形の定まらない影。
何故だろう。懐かしい気がする。
呼び止めたい。誰か、大切な人だった気がする。
声が、出ない。
金縛りにあったように、身体が言うことを聞かない。
影は去っていく。
去り際に、聞こえた言葉は。
「貴方は────」
───世界を破滅へ導く。
──────────
………夢、なのか。
一体、何だと言うのか。
「僕は、世界を破滅へ導く、のか……?」
「あ、優都。ようやく起きたんだぜ。」
ん、あれ?もしかして僕は、倒れたのか?
……あの程度の疲労で倒れるなんて、僕もまだまだだな。
ここは……アリスの家だな。さっきまで、影と戦って、魔理沙達と話をして、それで……
「……外で倒れたのか。運んでくれてありがとう。」
礼を言って、僕は外に出ようと扉へ向かう。
「お、おい!何処に行くんだぜ?」
「いや、何処って。帰るんだよ、博麗神社に。」
「……貴方、その身体で帰るつもり?私としては、そうして欲しい限りだけど、自分の状態も考えなさい。」
部屋の奥からアリスが言った。
部屋の奥で何体もの人形が宙に舞う。
明らかに浮遊している。
今更この程度のことにツッコミなど入れない。もう慣れた。
「……邪魔だと言うのなら、それでも邪魔をするほど空気の読めない人間じゃないよ。」
人形を操りながら、アリスはこちらに視線を送る。
「……私はどうでもいいの。それでも、魔理沙が心配するのよ。」
……心配?
「……まるで、『そんな言葉初めて聞いた』とでも言いたげな顔ね。」
「……心配、か。」
「な、なんだぜ?そりゃ、あんな大怪我してたら、心配するのは当たり前なんだぜ!」
……大怪我してたら、心配するのは当たり前、か。
「……くくっ。やっぱり、お前達は優しいんだな。」
心配、心配か。
僕は、外へと出ていく。
夜の森。肌寒い風と相まって、よりいっそう不気味に感じる。
「おい優都!せめて今日は休んでいけって!」
「……いや。このくらいの傷なら、本当に問題ない。」
強がってるわけじゃない。これくらいなら、まだ。
それに………
「二人の時間を邪魔するのも、無粋ってものだろう?」
魔理沙に笑いかけて、僕は真っ暗な森へと向かう。
魔理沙が真っ赤な顔で何か言っていたが、
どうせ
「だから!違うって言ってるだろうが!」
っていう照れ隠しだろうから、聞かずにさっさと帰ることにした。
どうも、霊夢よ。
次は博麗神社に戻ってくるのかしら。
夜の森。これだけで、なんだか不吉な印象よ。
次回までゆっくり待っていなさいよね!