第28話 自己犠牲の理由
──────────(view side Marisa&Alice)
雷鳴のような凄まじい爆音が鳴り響く。
それと同時に、大きく地面が揺れた。
「な、何があったんだぜ!?」
「これ、家の前、なの!?」
突然の状況に混乱する魔理沙とアリス。
無理もない。
外から大爆発を起こしたような爆音が鳴り響いてくるのだ。驚かない方が異常だろう。
「なん、だぜ?外で何が起こってるんだぜ?」
「待ちなさい、魔理沙。今この状況で外に出るのは危険よ。」
何が起こっているのかが分からない。これほど怖いものは無い。
最悪、外に出た瞬間にも死ぬかもしれない。
ならば、せめてこの家の中に。
「くっ。霊夢と優都、無事でいてくれなんだぜ……!」
程なくして、爆音と揺れが収まる。
残ったのは不気味なほどの静寂。得体の知れない恐怖。
「……外を、確認してみる?」
「そ、そうだな。それが良いと思うんだぜ。」
扉を開け、おそるおそる外の様子を確認する。
すると──────
「ゆ、優都!?どうしたんだぜ!?」
そこに居るのは、おびただしい量の血の中で倒れている優都。
これがすべて優都の血なら、死んでいたって不思議ではない。
「ん……あぁ、魔理沙。うるさかったかな。ごめんね。」
「何を言って──いや、今はそんなのどうでもいい。早く治療を」
「大丈夫、だ。ちょっと、血が足りないけど、別に問題は無いよ。ありがとう。」
問題ない、わけがない。
優都はボロボロになっている。
血で汚れていない部分を探す方が難しいほど血で染まり、
皮膚が破れ、とても痛々しい。
視線はこちらに向けるが、明らかに焦点が合っていない。
満身創痍なのは明白だ。
「そんな身体で、何を言ってるんだよ。何があった?霊夢はどうしたんだぜ。」
「霊夢には、逃げてもらったよ。あれは……手に負える代物じゃない。」
「……どういうこと?」
「……『影』だ。形を持たない影。まともな攻撃は当たらない。それでなくとも、あれは強い。」
「……お前がそう言うほどなのか?霊夢でも……戦えないってのか?」
あり得ない。博麗の巫女ですら敵わないなんて。
「……事実、霊夢のスペルカードは発動しなかった。あいつの影響だろう。」
「そ、そんなことは今までなかったんだぜ?」
「……信じられないか?」
信じられないんじゃない。信じたくない。
あの博麗の巫女が勝てない?じゃあ、どうやってこの幻想郷を守るんだ?
紫?あいつは滅多に動かないし、異変解決は霊夢に任せてる。
……なら、誰が守れるんだ?
「……僕が、守るさ。いくら傷ついたって、どんなに血を流したって。例え偽善でも、君達を救いたい。」
「どうして。どうしてそこまで、お前は私たちを助けてくれるんだぜ?」
「……それはね。」
───君達の心が、温かいからだよ。
そう言って、優都はその場に糸が切れたように崩れた。