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東方 永恋郷『Absolute Sense』  作者: 如月 椿
第1章 境界異変
28/211

第28話 自己犠牲の理由

──────────(view side  Marisa&Alice)


雷鳴のような凄まじい爆音が鳴り響く。

それと同時に、大きく地面が揺れた。


「な、何があったんだぜ!?」


「これ、家の前、なの!?」


突然の状況に混乱する魔理沙とアリス。

無理もない。


外から大爆発を起こしたような爆音が鳴り響いてくるのだ。驚かない方が異常だろう。


「なん、だぜ?外で何が起こってるんだぜ?」


「待ちなさい、魔理沙。今この状況で外に出るのは危険よ。」


何が起こっているのかが分からない。これほど怖いものは無い。

最悪、外に出た瞬間にも死ぬかもしれない。


ならば、せめてこの家の中に。


「くっ。霊夢と優都、無事でいてくれなんだぜ……!」


程なくして、爆音と揺れが収まる。

残ったのは不気味なほどの静寂。得体の知れない恐怖。


「……外を、確認してみる?」


「そ、そうだな。それが良いと思うんだぜ。」  


扉を開け、おそるおそる外の様子を確認する。

すると──────


「ゆ、優都!?どうしたんだぜ!?」


そこに居るのは、おびただしい量の血の中で倒れている優都。

これがすべて優都の血なら、死んでいたって不思議ではない。


「ん……あぁ、魔理沙。うるさかったかな。ごめんね。」


「何を言って──いや、今はそんなのどうでもいい。早く治療を」


「大丈夫、だ。ちょっと、血が足りないけど、別に問題は無いよ。ありがとう。」


問題ない、わけがない。

優都はボロボロになっている。

血で汚れていない部分を探す方が難しいほど血で染まり、

皮膚が破れ、とても痛々しい。

視線はこちらに向けるが、明らかに焦点が合っていない。

満身創痍なのは明白だ。


「そんな身体で、何を言ってるんだよ。何があった?霊夢はどうしたんだぜ。」 


「霊夢には、逃げてもらったよ。あれは……手に負える代物じゃない。」


「……どういうこと?」


「……『影』だ。形を持たない影。まともな攻撃は当たらない。それでなくとも、あれは強い。」


「……お前がそう言うほどなのか?霊夢でも……戦えないってのか?」


あり得ない。博麗の巫女ですら敵わないなんて。


「……事実、霊夢のスペルカードは発動しなかった。あいつの影響だろう。」 


「そ、そんなことは今までなかったんだぜ?」


「……信じられないか?」


信じられないんじゃない。信じたくない。

あの博麗の巫女が勝てない?じゃあ、どうやってこの幻想郷を守るんだ?


紫?あいつは滅多に動かないし、異変解決は霊夢に任せてる。

……なら、誰が守れるんだ?


「……僕が、守るさ。いくら傷ついたって、どんなに血を流したって。例え偽善でも、君達を救いたい。」


「どうして。どうしてそこまで、お前は私たちを助けてくれるんだぜ?」


「……それはね。」


───君達の心が、温かいからだよ。


そう言って、優都はその場に糸が切れたように崩れた。

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