第19話 過去の幻影と異変の兆し
どうも、魔理沙だぜ。
もう、原作の設定無視は今さらになりつつあるな。
これからもおそらく、設定を無視した話が出てくるが、
分かっていただきたいんだぜ。
過去の幻影は、消えない。
いつだったか、剣術の稽古をしていた頃。
『助けてっ………助けてよ!』
強い感情。これは……恐怖か?
『助けて』。この言葉が意味するところは────
「───────ッ!」
僕は駆け出す。
丁度持ち合わせていた竹刀を持って。
案の定。ナイフを振り回す男が暴れまわっていて、非常に危険な状況だ。
竹刀を持つ僕を見るやいなや、すぐさま襲いかかってくる。
「まずはお前から殺してやるゼェ!」
濁りきった殺意。
刺し殺すために向かってくるナイフ。
身体をひねってナイフを避け、後方へと跳躍。
間髪入れずにがら空きとなった胸に竹刀で刺突を放つ。
確かな手応え。
肋骨を折ったか。
吐血して男が倒れる。
肺に刺さったか。
「………誰か、救急車を呼んでください。」
冷酷な光を宿した瞳を向けて言った僕に向かって放たれた言葉は……………。
──────化け物。
──────人殺し。
そんな声と、悲鳴じみた叫び声だった。
あぁ、またなのか。また、僕が動いた結果がこれなのか。
助けても非難され、僕は何一つ報われないのだ。
感謝を求めたわけじゃない。
だが、せめて。
せめて、一度くらい。
恐怖ではなく、笑顔を。
笑顔を向けてほしかった。
──────────
「優都?どうしたのよ。」
………。戻ってきた、のか?
霊夢が僕の顔を覗き込んでいる。
「いや、何でもない。さぁ、ぼくのスペルカードの説明も済ませたし、早く帰ろうか。」
「そうだ。早く帰るんだぜ。」
「あんた、もうそのまま帰りなさいよ…………」
──────────
翌日。
「守矢神社に行くわよ。」
「どしたの急に。」
唐突すぎるだろ。せめてそこに至った経緯を言え、経緯を。
「じゃあ、早く支度しなさい。」
「おいこら、だから経緯を話せってば。」
「経緯も何も、あんたに会わせるためよ。とりあえず、うちと同じ神社から行きましょうか、っていうね。」
あぁ、なるほど納得。
「ていうか、こことはまた別の神社があるんだね。」
「そうね。この幻想郷にある神社はうちと、守矢の二つね。」
「向こうも貧乏なのか?」
「………………………………。」
「なるほど。貧乏なのはこっちだけなのか。」
「う、うるさいわね。仕方ないのよ、うちの神社は古いし、幻想郷の最東端にあるの。参拝客なんて、そうそう来たりしないわよ。」
完全に言い訳だろ。
まぁ、そこをとやかく言っても仕方ないか。
「良いよ。早く行こうか。」
「………もう。最初から素直にそう言えばいいのよ。」
僕達は博麗神社を後にする。
風に乗って桜の花びらが舞う。
今の季節は何だったか。
桜なんて、今まで咲いていただろうか。
どうも、霊夢よ。
今度は守矢神社に行くことになったわね。
次回は衝撃の事実が出てくるみたいよ?
次回までゆっくり待っていなさいよね!