第17話 焦心苦慮
どうも、魔理沙だぜ。
今回の後半は、優都くんの過去の回想なんだぜ。
優都くんの過去に何があったのか、
私もすごく気になるんだぜ…………。
「その白い玉って、あんたそれ、弾幕?」
「ん?あぁ、いや。これは『反物質』だ。」
「反物質?ってことは、まさか───」
「あぁ、このクレーターはその一つが対消滅を起こしたことで出来たものだよ。」
『反物質』。ありとあらゆる物質を消滅させる物質である。
ただし、対消滅を起こすと
莫大なエネルギーが周囲に放出され、辺りが無に還る。
数グラムで都道府県一つが地図から消える位の威力はあるだろう。
「……もう。そんなの使われたら勝ち目が無いじゃない。」
「近づくことすら出来ないんだぜ。……私達の負けだな。」
そりゃ、そうだ。
近寄れば自分が消し飛ぶどころか、周囲一帯を消滅させるほどの威力があるのだから。流石に周りの人間を巻き込むリスクを負ってまで近づくことなど出来ないだろう。
「……それで、そのスペルカード、もしかしてどんな物でも創れるとか?」
「ん、惜しいな。このスペルカードは、発動した直後に想像したイメージを具現化するんだ。あまり複雑な物や、複数の物を具現化することは出来ないんだけどね。」
より詳しく言えば、具現化することが出来るのは物体だけ。
その物体に概念を付与することが出来る。
例えば、フランと戦った時に使った刀。
あの時に具現化した刀は二振り。
『壊れない』を付与した刀と、
『音を消す』を付与した刀だ。
「………そんなスペカが作れたりするのか。反物質も創り出せるなんて。」
「さっきの弾幕を受けても無傷だったし。あんた、本当に人間なの?」
まったく、みんなそれを聞くんだよなぁ。
「何度も言ってるけど、一応は人間のつもりだよ。」
─────────化け物。
一応は人間だ、と言った途端だった。
ふと、あの記憶がフラッシュバックする。
──────────
僕は常人には無い呪われた能力を持っていた。
人の心を読む力。
この力が発現した時、まだ幼かった僕は、力を抑える術が分からなかった。
あれは、大きな町の中。
────気持ち悪い。
────うるさい。
────憎い。
────殺したい。
────死ね。
幼い僕の頭の中に流れ込んでくる無数の負の感情。
そんなものに一人の人間が耐えられるはずもなく。
僕の精神は、呆気なく崩壊した。
愛想よく振る舞う恋人達のドス黒い感情。
子供を連れた親の心ない言葉と感情の奔流。
仲の良い友達への恨み。
あちこちへ飛び交う殺意。
何処に居ても変わらない。
何も変えられない。
表に映す美しい感情なんて微塵も感じられない。
あるのは汚れた負の感情だけ。
僕の心は、少しずつ蝕まれていく。
そんなある日、僕が通っていた学校で、いじめが起こったのだ。
どうも、霊夢よ。
優都の過去の回想に入ったわね。
『一応は人間』。その言葉で、
彼の心の中の闇を、その苦しみを、
どれだけの人が理解できるのでしょうね。
次回にも過去の回想は続くわ。
学校で起こったいじめの話からね。
次回までゆっくり待っていなさいよね!