第102話 心の読み手
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「優都、出かけるわよっ!」
「……今日はどこへ行くんだい?」
なんだかもうお馴染みとなりつつあるこの展開。今度は何処へ連れていかれるのだろうか。
「地霊殿よ。ずっと試してみたかったこともあるし。」
試してみたかった、こと?
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「ふぅん?私とその人、心の読み合いをさせたらどうなるのか知りたかったと。なるほど?」
「「はい、その通りでございます。」」
「……留守みたいだったから勝手に入って、私の下着やらを物色してたと?」
「「それはこいつが悪いんです!」」
同時に相手を指差す僕と霊夢。
こんな状況になったのには、無論理由がある。
『旧地獄』である地底世界へとやって来た僕と霊夢。
その広大な土地の中心部、『地霊殿』へと足を運んだが、どうやら留守らしかった。
が、霊夢の
「勝手に入っても問題ないわよ。いつも勝手に入っているもの。」
という一言でお邪魔させていただくことになった。
その結果がこれである。
え?下着云々が抜けてるって?そこを説明したら長くなるので省略。
ただ、『霊夢のせいだ』とだけ言っておこう。
……すいません。大変眼福でした。
「……そこの方、優都さんと言いましたか。ちょっと黙っていてもらえます?」
え、僕は何も喋ってな──しまったぁ!この子心が読めるんだ!
女の子──古明地さとり、と言ったか──は、顔を真っ赤にして僕をチラチラ見ていた。
何あの仕草可愛い。
「ん、心の読み合いだよね?それなら、そうだね……」
なんだか面倒なことになりそうだ。さっさと話題を逸らしてしまうことにする。
心の読み合い。心に映った想いが読み取られるなら、何も心に映さなければいい。
無心。何にも揺らがず、何にも心を乱すことのない。
「あ、あれ?読めなくなった。どうしてっ!?」
「……優都?」
『あれ、こんなの初めて。心が読めない人間なんて、今まで居なかったのに!』
ん、随分と驚いているようだ。流石に何も考えていなければ読み取ることなんて出来ないだろうな。当然だ。
だから、心の中で考える。
「──ッ!優都、さん?」
「……どう?伝わったかな。」
心に映したのは、親愛。
彼女が感情まで読み取れるのかは分からなかったが、今の様子だと読み取れたようだ。
彼女の奥底にあった感情を少しだけ覗かせてもらった。普段はこんなことしないが、心を読まれた仕返しとして。
そこで感じたのは、絶望。
悲しみ、苦しみ。その小さな身体に背負うにはあまりに大きすぎる感情。
だから、僕は言うのだ。
「僕も、背負わせてもらうよ。」
精一杯の笑顔を浮かべて。
初めて見つけた、自分と同じ存在を。同じ世界に絶望した少女を。
「……ふふっ。優都さんって、変な人ですね。私、貴方のことをとても気に入りました。古明地さとりです。」
「神無月優都だ。よろしくお願いするよ、さとり。」