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ドリムストーン  作者: PP
1/1

少年と大木

結末など何も考えていません。ただ書きたかった、それだけです。

2014/10/28:更新

2014/10/29:更新

 私に話かけるのは誰なんだろうか。


「*******」


 そもそも私は誰なんだろうか?


「******るね」


 話しかけられるが、まだ言葉がよくわからない。


『私に何か用があるのか?』


「***てるの?」


 目の前は真っ暗で、体も自由に動かせない。自身が何者なのか自問自答するようになりどれくらいの月日が経ったのだろうか。


「今日から俺も学校に通うことになったんだ、将来は美味しい食べ物を育てるんだ!」


『そうか、それで何を作るんだい?』


 これは目の前にいるであろう、少年とのやりとりである。やはり未だに体は動かせず、目の前も真っ暗のままである。

 それはそうだろう、自分が樹であり、そこに向かって相談ごとや愚痴、自慢などをしにやってくる少年が私の存在を確かなものへと昇華させてくれたものだと私は考えている。


「果物全般だな、おいしいからな!」


『それはいいな、私も是非食べてみたい』


「うん、出来たら必ず最初にあげるよ、約束するよ!」


 少年は毎日、ボロボロな姿になるまで体を動かし、そして学んでいった。私の目の前には暗闇しか広がっていないが、毎回やってくるこの少年のおかげだろう、ヒトという存在もわかるようになっていた。




「今日はついにコレができたんだ、是非食べて欲しいんだ」


私の足元、でいいのだろうか。少年が作ったであろう果物が置かれている、はずである。


『これは何なんだい?』


「へっへーん、これはイチゴっていう果物なんだ」


『イチゴ、、、か』


「すっごく甘い、とまではいかないけど食べれるのがやっと出来たんだ、だから君に最初にあげる」


『ありがとう』


「そして、これをもって俺、リク=ドライアイはアイス=フローズへ告白しに行こうとここに誓う」


『勝算はあるのかい』


「実はアイスさんの好きな食べ物がイチゴだったんだよね、、、大丈夫かな」


『こんな私のところに時間をみつけては来てくれるリク、お前なら大丈夫だよ』


「へへ、、、行ってくるイテッ」


 私に応援できる事は何もない、何もなくとも応援したい。そしてこのイチゴという物を約束通り最初に私のところに持ってきたのだ。何とかしたいという気持ちからか少年にプレゼントを渡す事が出来た。


「ってぇ、、、あ、れ、氷?」


『私からのプレゼント、と思って受け取ってくれ』


「これ、、、君が応えてくれたのか」


 少年は私の体、に出来ているだろう氷の塊を抜き取る。


「エレメンタルリング、だよねこれ」


『使ってくれ』


 私は何をしたのだろう、記憶にもやがかかっている。でも、少年へ初めてお返しができたような気がして悪くない気がした。


「ありがとう、大切にするよ」


 そう行って少年は告白へともと来た道を戻った。


『私もこのイチゴ、大切にするよ』


 足元に置かれていたイチゴは完全凍結し、食べる事は叶わずも朽ちることなく俺と共に長い時間を共にすることとなる。



『少年は、リクはどうなったのだろうか』


 私はいつごろからか、少年がいない時でも一人考え、少年に話しかけるかのように思念した。


『想い人とはうまくいったのだろうか』


 私は日々、独り思考を巡らせていた。



「ここが俺の秘密の場所なんだ」


「結構深くまで来たけど、大丈夫なのリク」


 私は少年の声が聞こえ心が弾んだ。そして、同時に知らない音が聞こえた。


「ああ、でも変な目でみないでくれよアイス」


「リクが真面目なのは知ってるけど、こればかりは確認しなきゃね」


『その様子だと、うまくいったのだな』


「俺たちに指輪を贈ってくれた君のおかげで、かな」


 そう言い、少年はリングをみせびらかす。私にはどのような光景かはわからないが、きっと自慢しているのであろう。


「ほ、ほんとに樹から声が聞こえてくるのね」


 一方、アイスという少女は少し怯えているようである。


『驚かしてすまない、そして少年、少年の大切な人よ、私からも祝福する』


「あ、ありがとうございます」


「実は、俺たちはこれから北の方へ移る予定なんだ」


『そうか』


「それで、しばらく君と会えなくなるから俺たちからのささやかだけど」


「「祝福を」」


 少年と少女はそういい、私へと何かをふりまいた。


「これは、俺が作り上げた栄養の高い土と水なんだ、樹といえばこれかなって」 


『ありがとう、私はずっとこのイチゴも、そして今の祝福も大切にするよ』


「…?」


「えっ、あれ何っ」


 私の足元に少女、アイスといっただろうか、がやってきて私の大切な物を持ち上げた。


『そ、それは私の』


「これ、凄いわ…凄いわよ!」


「俺もビックリだ…」


『それは私の大切な』


「本当だったわリク、貴方の親友って本当に凄いわ」


「だ、だろ」


「ええ、貴方、名乗り遅れましたが私はアイス=フローズ、リクの妻でございます」

「リクが今まで秘密にしていた事を聞いたとき、実はリクが変人だったんではないかと疑っていました。樹が心を癒し、導いてくれたという話は信じがたかったのです。しかし今、貴方という存在を私も確認し、納得いたしました」

「これまでリクを支えていただけた事を感謝します」

「そして、これは私達の進むべき道を示してくれました」


「お、おい」


「私、アイス=フローズは導いてくれた貴方様に感謝をします」


 アイスの手元にはあの日リクから送られたイチゴが、氷漬けのまま新鮮な状態でにぎりしめられている。少年がプレゼントしたあの日から、2年という月日が経った日の出来事であった。

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