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絶望の世界

 いつもなら、人が賑わい忙しくしている町中……。


 だが、今では人のうめき声や叫び声が響き渡り、惨劇が繰り返されている。


 そんな非常識が日常になってしまったのはいつからなのだろうか……。


 原因は分からない


 世界は突然悲しみにつつまれてしまった。


 そして人が生き延びる方法はすでになく、逃げる場所もない。




 そう、世界は滅んだのだ。



 誰も生きる事は許されない。それは、人間をこえようとしている人に対しての罰なのだろうか。


 だが、もう遅いのだ。


 いまさら、悔やんでも、仕方がないのだ。



 いつも絶望に溢れている。

 いつ死ぬのか、分からない。もう悲しみも、苦しみも、壊れてしまったようだ。

「松本くん、はやく来なさい! ここはもう危ない!」

 真夜中の何時だろうか、運良く生き残った俺の元恩師、山吹十一やまぶきじゅういちは忙しく俺を起こす。

「先生、俺……もう」

 俺はもう、死んでもいいと思っていた。このままこんな生活を続けていても辛いだけだ。

「馬鹿野郎! お前が弱きになってどうすんだよ!! お前の死んでいった母さんも父さんも、兄弟もよう! お前が死んじまったら……全て終わりなんだぞ!!」

 熱く、そして悲しげに叫ぶ先生。先生もまた、精神状態は普通じゃない。だが、この狂った日常の中で生き延びようとしている先生はやはり強いのだろう。

「分かったよ……先生、俺もうちょいがんばる」

 このまま死んでもよかったけど、先生のためにもう少し長く生きようと思った。そう、ただそれだけ。

「……それでいい。それでいいから、生きてくれ」

 弱々しく言った先生であったが、その瞳は強く輝いていた。この人は本当に生きようとしている。

 俺には理解できない。実際に先生の家族だって死んでしまったのに……。


 しばらく俺と先生は歩いた。どこに行っても生きている人は見あたらない。死んだ人なら、たくさんいるが話しかけでもすればあっという間に殺されてしまうだろう。

「先生、どこに行こうとしてるんですか?」

「……松本、すまない。先生にも分からないんだ」

「やっぱり」

 予想はしていた。この世界はもう滅んでいるのだ。そしてなぜか運良く生き残った俺たち二人。神は人を全て滅ぼしてしまったのだ。生き残ったのはアダムとアダム。もう、人が生まれる事はないんだ。

「先生、世界中こんなだったらどうします?」

 先生は固まってしまった。

「先生?」

「あ、ああ、お前はそう考えるのか……仕方ないよな。実際にここ最近は生きてるやつなんか見ないもんな」

 数日前までは、俺たちのような人間は何人かいた。だが、ある者は徘徊している怪物に殺され、ある者は怪物になり、日がたつにつれ、生きている人は減っていき、そしていなくなってしまった。

「ま、松本!」

 先生がいきなり大声をあげた。

「なんです?」

「い、生きている人がいたぞ! おい、後を追ってみよう!」

 あまり、信じられなかったがどんな希望さえ欲しかった。


 走る先生の後を追う、何日もご飯を食べていないせいで走るだけで目の前がくらくらする。だが、先生を見失わないよう俺は必死で後を追った。

「おい、ちょっとまってくれ!!」

 先生はどうやら、俺以外の人に呼びかけているらしい。そして、俺もようやく生きている人を見つける事ができた。

「……お前ら、正気のようだな」

 相手は自衛隊風の身なりをしており、体格はプロレスラーのようだ。

「はあはあ、ああ、俺達は人を食ったりなんかしない」

「そうか、なら地下シェルターに連れて行ってやろう。おっと、俺は自衛隊の救助員、朝来義経あさきよしつねだ。運が良かったな、これでシェルターに帰ろうと思ってたんだ」

 朝来は一目で信頼できると思った。逞しい体に、重装備。だが、それ以上に朝来からは正義感が溢れていた。

「シェルター? なんだ、それは?」

「まあ、簡単に言えば避難所だ。詳しくはシェルターで話してやろう」

 そういうと、朝来は走りだし、それに続いて先生も走った。

 だが、俺にはもう走る力は残っていない。何日も食べていないんだ、体が言うことをきかない。

「お、おい! 大丈夫か松本!? 自衛隊! まってくれ、俺の生徒がやばいんだ!」

 先生の言葉に朝来は少し顔を顰めた。

「何? ウィルスに感染してなければよいが……」

 ウィルス? 朝来は意味深な事を言ったが俺を担ぎ上げるとまたすぐに走り出した。

「あんたの方は大丈夫か? 二人くらなら担げるぜ?」

「生憎、俺のほうはまだまだいけるさ」

 朝来に担がれながら、先生の体力にも驚かされた。

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