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いじめポイント制の被害者「僕にも選ぶ権利ありますよね?」

作者: 桐山じゃろ
掲載日:2026/04/20

 僕は頭も下げず、それが断りの常套句だからという理由で、目の前の女子に謝罪の言葉を口にした。

「ごめんなさい」

 感情はあまりこもっていない。強いて言えば、迷惑、だった。

 女子は僕の前に差し出した手もそのままに数秒固まり、それから大きな声で叫んだ

「どっ、どうしてっ!?」

 想定外の出来事だったらしいが、僕の知ったことではない。


 女子が僕に告白してきて、僕が断った。


 それだけのこと、という状況になるまでに、半年もかかった。

 ようやく、僕の復讐が少し叶った瞬間だった。




 半年前、女子は僕の名前など知らなかった。

 クラスのカーストで堂々の最下位、醜く太っていて、勉強もスポーツも平均以下。

 僕に取り柄があるとすれば、親が事業に成功して、自由になる金を与えられているという一点のみだろう。

 しかしカースト最下位の僕に話を聞くやつなんていないし、僕もこんなことを喧伝しなかった。


 だから、虐められた。

 教科書や制服、体操着は何回買い直したかわからない。階段から突き落とされて骨折したこともあったが、犯人は分からず有耶無耶にされた。

 いじめで済まないから警察を頼ったこともある。それすらも、学校側から何かしら働きかけがあり、もみ消されてしまった。


 そんな時、僕は女子の内緒話を聞いた。

 いじめの主犯である、カースト最上位の女子のこと。

 クラスの中で、いじめに対してポイント制という制度があること。

 誰かをいじめるとポイントが得られ、ポイントが溜まると他の参加者から金やモノを貰えること。

 いじめの対象は、相手のカーストが高いほど得られるポイントが高く、いじめの内容が酷いほど跳ね上がる。

 つまり、僕へのいじめは大したポイントにならない。

 ところが……主犯の女子は、僕に大怪我を負わせたことで、大量のポイントを稼いだと自慢していた。

 そのポイントで今日は皆になにか奢ると騒いでいた。


 これまでの僕は、いじめられるのは自分が醜く愚かなのが悪い、と思いこんでいた。

 違ったのだ。

 奴らは、僕のことを「最下位」と呼んでいた。

 僕の名前すら知らない。

 ただ、くだらないポイントを集めるのに便利な駒だとしか考えていないのだ。


 僕は声を出す寸前で自分の口を両手で塞ぎ、その場を離れた。


 こみ上げてきたのは、愚かな自分に対する嗤いと、奴らに対する復讐心だった。


 その日のうちに、僕は行動を起こした。




 僕は半年間、学校を休んだ。

 半年間、ダイエットに勤しみ、体を鍛えた。

 成長期だったこともあり、身長は伸び、顔のニキビも無くなった。


 半年ぶりに見た鏡に写っていたのは、半年前とは別人になった僕だった。



 丁度学年が変わる頃で、僕は奴らとは違うクラスへ入ることができた。

 以前と違い、僕はいじめられなくなり、それどころか何人もの女子に言い寄られ、男子すらも僕に気に入られようと媚びへつらってきた。

 正直面倒くさかったが、彼らの好きなようにさせておいた。

 すると調子に乗った連中は、僕に喜々として例のいじめポイント制のことを教えてくれた。

 ルールは変わっておらず、僕はカースト最上位とされているらしいことも聞かされた。

 つまり僕はいじめる側、ポイントをやり取りする側に立ったということだ。

 反吐が出る。

 しかし利用することにした。


 僕は自分が受けたいじめを奴らに返すことはしなかった。

 僕はただ、穏やかな学校生活を過ごした。

 すると不思議なことに、僕以外の人間が勝手に暴走を始めた。

 僕というターゲットがいなくなり、お互いに醜い潰し合いを始めたのだ。


 最もヘイトを集めたのは、例の女子だった。

 これまでポイントのために誰彼構わずいじめを繰り返したせいで、自分にツケが回ってきたのだ。

 自業自得というやつだろう。

 半年前の僕と似たような目に遭って、相当参っている様子だった。

 誰もその女子を助けない。

 僕にも助けなんてなかったのだから、当然だ。


 そしてある日、僕は例の女子から体育館裏に呼び出された。

 罰ゲーム告白というやつだ。

 誰かが貯めておいたポイントを使って、女子に無視できない命令をした。

 それが、今やカースト上位となった僕に告白をするというものだった。


 僕は何も知らない顔で、指定された時間に、のこのこと出かけていった。


 体育館裏には、鈍い僕でもわかるほど、人の視線が集まっていた。

 僕から数分遅れて、女子がやってくる。

 そして、告白相手が僕であることに、何故かホッとしている様子だった。


「あの……」

「何の用事? 手短に頼むよ」

「えと……」

 手短に、という言葉が通じなかったのかな? 女子はしばらく、全身をもぞもぞとさせて言うべき言葉を溜めていた。鬱陶しい。

「何もないなら帰ります」

「ま、待ってっ、す、好きなんです! 付き合ってください!」

 ここまでにおよそ10分も掛かった。


 そして僕は、断った。




 僕が体育館裏の日向から日陰に入った瞬間、どこにどうやって隠れていたのか、野次馬たちが一斉に女子のもとへ集まった。

 フラれたことを囃し立て、お前じゃ釣り合わないと暴言を吐かれている。

 女子のその後を知るすべがないことだけが、この復讐の唯一の欠点だった。



 それ以来、学校でその女子を見ない。

 名前は何だったか。

 誰も覚えていない。

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