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【脚本】真ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生) ~混沌と秩序の双刃(そうじん)~  作者: たくみふじ


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第3話「月下の激突」

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

◯神奈川県横浜市・本牧埠頭(深夜)

午前二時。

かつて東洋一の貿易港として栄えた場所も、深夜には冷たい潮風と絶対的な静寂だけが支配する巨大な鉄の墓場へと姿を変える。

海からの容赦ない吹きさらしの風が、林立する巨大なガントリークレーンの鉄骨を不気味に鳴らしている。

青白い月明かりが海面を冷たく照らし出し、錆びついた第七D倉庫の巨大なシャッターに長く歪な影を落としている。


◯第七D倉庫・内部(深夜)

外の静寂とは打って変わり、吐き気を催すほどの悪徳と下劣な欲望の匂いが充満している。

天井から吊された水銀灯の無機質な光の下、数十名の完全武装したヤクザたちが油断なく周囲を警戒している。

その中心には、仕立ての悪いスーツを着た数人の東南アジア系バイヤーの姿。

彼らの視線の先、倉庫の中央に置かれた大型コンテナの扉が全開にされている。

中には、手足を結束バンドで縛られ、口をガムテープで塞がれたおよそ三十名の少年少女たちが、恐怖と寒さに震えながら身を寄せ合っていた。


バイヤー

「ほう、今回のロットはなかなかの極上品揃いだな。臓器のドナーにするにはもったいないくらいだ。富裕層の愛玩用として、かなり良い値がつくぞ」


ヤクザ幹部

「へへっ、もちろんでさァ。俺たちが全国から特別に『選別』して集めた特上品ですからね。さあ、とっとと代金のトランクを確認させて――」


幹部が揉み手をして歩み寄ろうとした瞬間。

ギイィィィィィン……ッ!

倉庫の入り口である重厚な鉄の扉が、目に見えない巨大な怪物の爪に引き裂かれたようにひしゃげ、吹き飛ぶ。


ヤクザA

「な、なんだッ!?」


ヤクザたちが一斉にアサルトライフルや拳銃を構える。

舞い散る埃と冷たい夜風の中から、革靴がコンクリートを叩く軽やかで優雅な足音が響く。


孝子

「まあ、なんて下品で吐き気のする匂い。ドブネズミの深夜の集会には、実にお似合いの泥臭い場所ですわね」


土煙が晴れたそこに立っていたのは、濃紺のセーラー服に身を包んだ北條孝子。

白く滑らかな肌は水銀灯の光を受けて真珠のように輝き、白百合のように楚々とした、しかし背筋が凍るほどに残忍な微笑みを浮かべている。


ヤクザB

「なんだぁ、このガキは?迷子か?それとも、自分から商品になりに来たってのか?」


男たちが嘲笑しながら銃を構え直す。


孝子

「……ガーディ。随分と威勢のいいネズミたちですわ。わたくしの美しい声が聞こえないほど、耳まで腐っていらっしゃるのね」


ガーディ

「へっ。お嬢様の仰る通りで。どいつもこいつもしばらく風呂に入ってねえのか、魂の底から悪臭が漂ってきやすぜ。私が残らず挽き肉にして、海に撒いてやりましょうか?」


孝子の足元の影がズルリと蠢き、漆黒の執事服に身を包んだガーディが姿を現す。

顔の半分を覆う影の奥で、凶悪な眼光が男たちをねめつける。


孝子

「お戯れを、ガーディ。彼らは、わたくしがこの退屈な日常の鬱憤を晴らすための、大切なおもちゃですの。……さあ、皆様。これより、わたくしによる極上の『お稽古』の時間を始めさせていただきますわ」


孝子がポケットから氷のように冷たく光る千枚通しを取り出した瞬間、ヤクザの一人が引き金を引く。

パパンッ!

だが弾丸は孝子の体をすり抜けるように虚空を切り裂く。

ガーディの影の力が空間を歪め、肉体を物理法則からわずかにズラしたのだ。


孝子

「遅いですわ」


ヤクザC

「……っ!?」


次の瞬間、孝子は弾丸を撃った男の背後に立っている。

男が振り返る暇も与えず、千枚通しを男の頸椎の隙間へと正確無比に突き立てる。

急所を的確に外し、極限の地獄の苦痛を脳髄に直接流し込む究極の一撃。


ヤクザC

「あ……が、……ァァァァァッ!」


男は白目を剥き、口から泡を吹きながらコンクリートの床に崩れ落ちる。

全身を業火で焼かれ、無数の針で内臓をかき回されるような狂気の痛みに苛まれ続ける。


ヤクザ幹部

「撃て!化け物だ!殺せェッ!」


恐怖に駆られたヤクザたちが一斉に発砲する。


孝子

「あらあら。もう少しお淑やかに遊べませんこと?……仕方ありませんわね」


孝子はガーディから受け取った黒いグリップのスイッチを入れる。

シュウウウツ!

極限まで圧縮された地獄の業火が、禍々しい赤い光の刃となって迸る。

倉庫内の温度が爆発的に上昇する。


孝子

「泣き叫びなさいあそばせ!」


赤い閃光が夜の闇を円を描くように切り裂く。

刃が男たちの腕や脚を掠めた瞬間、その切断面から地獄の炎が神経を伝って魂の奥底まで侵入し、精神を「苦痛」という情報だけで焼き尽くす。


ヤクザたち

「ぎゃあああああっ!」「痛いッ!熱いッ!助けてくれェェエッ!」


一瞬にして東の入り口付近は、手足を失いのたうち回りながら絶叫する男たちの地獄のオーケストラ会場と化す。

孝子は返り血の一滴も浴びることなく、その絶望の悲鳴を極上の音楽のように聞き入りながら恍惚とした笑みを浮かべる。


孝子

「ふふふ……ああ、素晴らしい音色。もっと、もっとわたくしを楽しませてちょうだい」


◯同・西側天窓(深夜)

東の入り口が地獄の業火に包まれていた頃。

倉庫の西側に設けられた巨大な天窓の強化ガラスの上に、深いワインレッドのブレザーを着た高清水涼子が羽のように軽く着地する。


亨(通信の声)

『――涼子様。現在、倉庫の東側入り口より、高密度の霊的エネルギーの侵入を検知。熱源反応は異常な数値を示していますが、物理的な火器によるものではありません。間違いなく、関ヶ原で観測したあの『赤い閃光』の主です』


耳元の真珠の通信機から、亨の冷静で論理的な声が届く。


涼子

「ええ、分かっとうよ、亨さん。こんな離れた場所におっても、あの下劣で吐き気のするような『苦痛』の匂いが漂ってくるんやからな」


涼子は天窓越しに眼下の倉庫内部を見下ろし、心底不快そうに顔を歪める。


涼子

「本当に、美しくないノイズですわ。命という不完全なシステムを停止させるだけなら、一瞬でデリートすれば済むこと。それをわざわざ、無意味な悲鳴を上げさせて喜ぶなんて。あんな野蛮なバグ、この宇宙の秩序コスモスに対する最大の冒涜ですのよ」


亨(通信の声)

『同感です。ですが、まずは我々のミッションである、人身売買組織の処理と、捕らわれている少年少女たちの無力化……もとい、保護を優先すべきです』


涼子

「ええ。この世のゴミどもを、わたくしの雷で塵一つ残さず浄化してやりますわ」


涼子は右手の指先を天窓の強化ガラスにそっと触れる。

脳内で空間の物理法則が演算され、強固なガラスが水面のように波打つ。

涼子の身体は音もなく倉庫の内部へと透過して落下していく。


◯同・西側コンテナヤード(深夜)

地上十メートルの高さから落下した涼子は、地面に激突する寸前にフワリと減速し、一切の足音を立てずに着地する。

目の前には、東の入り口の異常事態に気を取られ、背後が無防備になっている十数名のヤクザたち。


涼子

「……あんたたち、こんな所で何しとん?」


背後から唐突に響いたおっとりとした声に、男たちが弾かれたように振り返る。


ヤクザE

「なっ、なんだお前は!?どっから入ってきやがった!」


涼子

「ごきげんよう、皆様。わたくしは、あなた方のような『美しくないバグ』を、この世界から消去するために参りましたの。ごっつい迷惑やから、さっさとシステムを強制終了してや」


涼子はスカートのベルトから銀色に冷たく輝くショック棒を抜き放つ。


ヤクザE

「ふざけんな!撃てェッ!」


男たちが引き金を引く。

涼子の伊達眼鏡のディスプレイに、男たちの筋肉の収縮、銃口の向き、弾丸の弾道が青いデータとして可視化される。

最適な回避ルートがミリ秒単位で演算される。

弾丸の雨を数ミリの首の傾げと最小限のステップだけで完璧にすり抜け、瞬時に男たちの懐へと飛び込む。

パチッ!バチッ!バチッ!

青白い閃光が連続して弾ける。

致死量の特殊周波数の電流が、男たちの心臓と脳髄の生体活動を一瞬にして停止させる。

巨体が次々と糸を切られた操り人形のように崩れ落ちる。完全なる即死。


涼子

「……遅すぎるやん。あんたらの動きには、知性も論理もあらへん。ただの獣の暴走やな。ごっつい美しくないわ」


周囲を囲もうとする残りのヤクザたちを一瞥する涼子。


涼子

「亨さん、このゴミども、まとめてデリートしたるわ」


涼子はショック棒の出力を切り替える。

柄の先から青白いプラズマの超高圧電流が迸り、長さ数メートルの光の鞭となる。


涼子

「さあ、お掃除の仕上げやでぇ。塵一つ残さず浄化してや」


手首を軽くスナップさせると、青い光の鞭が空気を切り裂き男たちへ襲いかかる。

ゴオォォォッ!!

鞭が触れた瞬間、男たちの体は超高圧電流によって内側から焼き尽くされ、一瞬にして黒焦げの炭のオブジェへと変貌する。

西側は、悲鳴一つ上がらないまま青白いオゾンの清浄な匂いだけが充満する。


◯同・中央広場(深夜)

倉庫の東側から侵食する赤い苦痛の炎。

倉庫の西側から侵食する青い浄化の雷。

人身売買組織の男たちは挟み撃ちにされ、為す術もなく処理されていく。

そして、コンテナが積まれた倉庫の中央で、ついに二つの力が真っ向から衝突する。


組織のボス

「ひ、ひいいいッ!来るな!化け物どもめッ!」


人質のコンテナを背にして震えるボスの右側から、電光剣の赤い炎を揺らめかせ、優雅に微笑む孝子が歩み寄る。

左側からは、電流鞭の青い火花を散らし、氷のように冷たい表情の涼子が歩み寄る。

その瞬間、二人の少女の足がピタリと止まる。

水銀灯の光の下、彼女たちは互いの姿を初めて明確に視認する。


孝子

「……まあ。ごきげんよう。……昼間のカフェテラスでは、どうも。まさか、あの時の可愛らしいお嬢様が、わたくしの楽しいお稽古を邪魔する『青い稲妻』さんだったとは。……奇遇ですわね」


孝子は電光剣の炎をさらに赤く燃え上がらせながら、心の底から嬉しそうに残忍な笑みを浮かべる。


涼子

「……ほんまに、ごっつい奇遇ですこと。わたくしも、まさかあんな上品ぶった女が、この世で最も醜く、非論理的で下品な『赤い炎』の主やとは思いまへんでしたわ。……ダボが、あんたやったんか。わたくしの秩序を汚す、忌まわしいバグの正体は」


涼子は青い瞳に絶対零度の殺意を宿し、伊達眼鏡の奥で冷たく睨み返す。

昼間、上品な言葉の裏で牽制し合った二人が、互いの本性を完全に剥き出しにして対峙する。


ガーディ(声)

「お嬢様、お気をつけなせえ!あの女の背後にある『力』、尋常じゃありやせんぜ!それに、今この瞬間も、我々はるか上空の宇宙空間サテライトから、得体の知れない電子の網が我々をハッキングしようと探りを入れてきやがる!」


孝子の足元の影からガーディの切羽詰まった声が響く。


亨(通信の声)

『涼子様、敵の熱源が爆発的に上昇しています!相手のサポート役が強烈な霊的ジャミングを展開し、こちらのスキャンを弾き返そうとしています。私の展開した電子防壁ファイアウォールと、相手の呪詛の触手が、ネットワークの不可視領域で激しく衝突しています!』


涼子の耳元でも亨がキーボードを叩きながら叫ぶ。

現実の空間で対峙する少女たちの頭上で、地獄の霊力と天のテクノロジーによる熾烈な情報戦が火花を散らしている。


孝子

「……お黙りなさいあそばせ、ガーディ。わたくしは今、最高に気分がよろしいのよ」


孝子は千枚通しを指先でくるりと回し、電光剣を八相の構えに取る。


孝子

「あのような、感情も芸術性も持ち合わせていない、血の通わないお人形のような女。わたくしの『炎』で、その澄ました顔が恐怖と絶望に歪むのを、ゆっくりと、ジワジワと観察してさしあげますわ。……極上の悲鳴を聞かせてちょうだいね、堕天使様?」


涼子

「……美しくない。どこまでも、美しくないノイズですわ」


涼子も電流鞭の出力を最大まで引き上げ、周囲の空気をバチバチと青く弾けさせる。


涼子

「あんたみたいな、他人の痛みを悦ぶだけの野蛮で下劣な混沌バグは、この宇宙に存在する価値があらへん。わたくしの『雷』で、あんたの下品な魂ごと、塵一つ残さず完全にデリートしたるわ。……消えなさい、地獄のネズミ」


言葉はそれ以上必要なかった。

二人の少女が同時に地を蹴る。


孝子

「はあああああっ!」


涼子

「しゃあああああっ!」


赤い地獄の炎を纏った刃と、青い天の雷を帯びた光の鞭が、倉庫の中央で真っ向から激突する。

ドゴオオオオォォンッ!!

凄まじい衝撃波と爆音。

数十トンの鉄のコンテナが紙屑のように吹き飛ばされ、太い鉄骨が飴細工のようにひしゃげる。

赤と青の光が交錯し、爆炎とオゾンが入り混じった嵐が巻き起こる。


◯同・爆心地(深夜)

破壊の嵐の中心で、二人の少女は一歩も退くことなく、互いの得物を鍔迫り合いの形に持ち込んだまま至近距離で殺意をぶつけ合う。


孝子

「まあ、素晴らしいステップですわね、堕天使様。わたくしの『炎』を正面から受け止めるなんて、なかなか骨がおありのようですわ。ですが、その無機質で退屈な瞳が、絶望と苦痛の涙に染まる瞬間が、わたくしは待ち遠しくてたまりませんのよ!」


孝子はセーラー服の裾を爆風で煽られながら、電光剣の赤い炎の刃を力任せに押し込む。

炎が涼子の純白の肌を舐めようと蠢く。


涼子

「……お黙りなさいな、地獄のネズミ。あんたの攻撃は、感情任せで無駄が多すぎるんや。力任せに振り回すだけの野蛮な炎なんて、わたくしの演算の前では、ただの予測可能な物理現象に過ぎへん。……ダボが。そんな非論理的なバグで、わたくしの秩序コスモスを崩せると思うとうの?」


涼子は片手で電流鞭を操作し、孝子の斬撃をミリ単位の絶妙な角度で逸らす。

青白いプラズマが弾け、炎を相殺する。


涼子モノローグ

(……ごっつい不快やわ。わたくしの計算では、とっくに相手の武器の出力を上回り、システムをショートさせているはずやのに。この女の炎は、物理法則を無視して、こちらの雷を『喰らおう』としとる……!)


孝子

「ふふふ、強がりはおよしなさいあそばせ。あなた様のその澄ました仮面に、焦りの色が浮かんでおりますわよ?」


孝子は空いた左手でポケットから千枚通しを引き抜く。


孝子

「わたくしは、相手が足掻けば足掻くほど、その心臓に針を突き立てる瞬間の快感が深まる性質たちでしてよ。さあ、大人しくわたくしの芸術の極上のにえとなりなさい!」


千枚通しが涼子の喉元へ向けて閃こうとした刹那。


ガーディ(声)

「お嬢様ッ!いけやせん、一旦距離を取っておくんなせえ!」


亨(通信の声)

『涼子様、直ちにバックステップを!空間の熱量が臨界点を超えています!』


互いのサポート役からの警告。

二人は本能的な危険を察知し、同時に床を蹴って大きく後方へと跳躍する。

ドォォォォンッ!!

直前まで二人が立っていた空間で炎と雷が臨界点に達し、プラズマ爆発を引き起こす。

コンクリートの床がすり鉢状に抉れる。


◯神戸・地下ラボラトリー(深夜)

壁面を覆い尽くすモニターが真っ赤な警告の文字で埋め尽くされている。

亨が人間の動体視力では追えぬ速度でキーボードを叩き続けている。


「……信じられない。私の構築した多重防壁マルチ・ファイアウォールが、論理的なハッキングではなく、物理的なデータ回線を直接『呪い』で腐食させるような、未知の手法で侵食されている……!」


真っ黒なコールタールのようなノイズが這い寄ってくる。


「相手のサポート役は、人間のテクノロジーを根本から否定する高位の霊的存在。……だが、論理が混沌に屈することなどあり得ない。軍事用の高高度偵察衛星サテライトのマイクロ波レーダーをオーバーライドし、埠頭全体に高密度の電磁パルスを放射して、霊体の構成そのものを物理的に阻害するまでだ!」


亨がエンターキーを強く叩き込む。


◯本牧埠頭・第七D倉庫周辺(深夜)

ガーディが影の中で苦悶の唸り声を上げる。


ガーディ(声)

「ぐうおおおッ!なんという忌ま忌ましい光だ。空の彼方から、私の網膜を直接焼き切りにきやがる。このネズミ、ただの人間じゃねえ。天界の技術の片鱗すらも組み込んでいやがるな……!」


ガーディの影の身体がノイズのように激しく明滅する。


ガーディ(声)

「お嬢様を完全にサポートするためには、私の『目』が不可欠だ。だが、このままでは、あの『青い光』の主の正確なデータどころか、我々の魂の波形が完全に逆探知されちまう。……チッ、これほどまでに執念深く、論理の刃を突き立ててくる輩が、この地上に存在したとはな」


◯同・第七D倉庫内部(深夜)

距離を取った二人の少女が、再び互いを凄まじい眼光で睨みつける。

その絶頂の瞬間。


亨(通信の声)

『――涼子様!戦闘を直ちに停止してください!我々が展開している電子防壁の外側……本牧埠頭の周囲を囲む幹線道路から、多数の武装車両が猛烈なスピードで接近しています。無線を傍受しました。……神奈川県警のSAT(特殊急襲部隊)です!それも、一個中隊規模の完全武装。あと三分で、この第七D倉庫は完全に包囲されます!』


涼子

「……なんですって?警察ですって?これほど大規模な人身売買の非合法取り引き、しかも我々のような存在が介入している現場に、なぜ警察の特殊部隊がこれほど早く、正確にピンポイントで到着できるんですの?」


亨(通信の声)

『分かりません。ですが、彼らは最初からここで大規模なテロ行為が行われることを知らされていた。誰かが、極めて正確な情報を警察の上層部に直接リークしたんです。……涼子様、これは我々を捕らえるための、あるいは我々の対応能力を測るための罠です!』


同時に孝子の脳内にもガーディの焦燥に満ちた叫びが木霊する。


ガーディ(声)

「お嬢様ッ!遊びの時間は終了でさァ!外の様子がおかしい。この倉庫の周囲半径五百メートル以内に、完全武装した人間どもの集団が、数十台の車両で押し寄せてきやがった!殺しに慣れた特殊部隊の匂いがしやすぜ!」


孝子

「……まあ。どういうことですの、ガーディ?わたくしたちの完璧な隠蔽を、人間ごときが嗅ぎつけられるはずがありませんわ」


電光剣の炎を下げ、忌ま忌ましそうに顔を歪める孝子。


ガーディ(声)

「ええ、我々の尻尾を掴まれたわけじゃありやせん。恐らくは……我々をこの場所に呼び出した、あの得体の知れない『神託オラクル』とやらですぜ。奴がわざとサツにタレ込みやがったんだ。我々とあの青い光の女を衝突させ、そこに人間どもの軍隊を介入させたらどういう『データ』が取れるか。奴はそれを高みの見物で測ろうとしていやがる!」


二人は互いから数メートルの距離を取ったまま、絶望的な報告を聞き、見えざる第三者の底知れぬ悪意に戦慄する。

最初から最後まで、自分たちは「神託」の掌の上で踊らされているだけの実験動物だったのだ。


涼子

「……ふん。反吐が出ますわね」


涼子は電流鞭のスイッチを切り、ベルトに収める。


涼子

「見ず知らずの他人の手のひらの上で、美しくない殺し合いのデータを提供させられるなんて、わたくしの論理ロジックに対するこれ以上の屈辱はあらへん。……今日のところは、この辺で引いたるわ」


涼子は伊達眼鏡を中指で押し上げ、冷たい瞳で孝子を見据える。


涼子

「地獄のネズミさん。あんたのその下品で野蛮な炎、今日はわたくしの雷で完全に浄化して差し上げられなくて、ごっつい残念やわ。でも、次にお会いする時は、その野蛮な魂ごと、必ず塵一つ残さずデリートしたるから。せいぜい、震えて眠ることね」


孝子

「あらあら。負け犬の遠吠えとは、まさにこのことですわね。……堕天使様」


孝子も電光剣の炎を消滅させ、アタッシェケースに収める。


孝子

「せっかく、これからあんたのそのお高く止まった人形のような顔が、恐怖で涙と鼻水に塗れるところを特等席で拝見しようと思っておりましたのに。本当に、水を差されて不愉快極まりないですわ。……次に相まみえる時は、あんたのその綺麗な身体に、千の針を突き立てて、絶望の音色を奏でてさしあげますわ。わたくしの『お稽古』から、永遠に逃げられると思わないでちょうだいね」


二人は全く別の方向へと背を向ける。

コンテナの中に閉じ込められている被害者の少年少女たちなど眼中にない。


亨(通信の声)

『SAT、敷地内に突入しました!倉庫の各ゲートを爆破します!』


孝子

「ガーディ。わたくしの視界から、この醜い人間どもを消しなさい」


孝子の足元の影が膨張し、全身を包み込む。

闇から闇へと繋がる地獄のワープトンネルの中へ、孝子は音もなく沈み込む。


涼子

「亨さん。退避ルートの演算、実行してや」


涼子は壁際へ走りながら、特殊スーツの光学迷彩モードを起動する。

爆発によって崩れた壁の隙間から、真っ暗な夜の海へとダイブし、待機していた潜水スクーターで姿を消す。


轟音と共にブリーチング用の爆薬が炸裂し、閃光弾の光が倉庫内を満たす。

完全武装のSAT隊員たちが突入するが、そこには二人の少女の姿はない。

残されたのは、手足を切断され発狂したように絶叫するヤクザたちと、黒焦げの死体の山。


◯イメージカット(夜)

横浜の深い夜の闇に消える二羽の鴉。

互いの魂に消えることのない強烈な敵意を刻み込んだ二人。

そして、その背後に静かに広がる『神託』の不気味な影。

X(Twitter)では脚本版などもつぶやいています。

https://x.com/TakumiFuji2025

サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!

極上の苦痛か、一瞬の消去か。絶対に交わらない少女たちが世界に抗う!

血と狂気に彩られた、反逆のダークファンタジーアクション、ここに開幕!

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