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第30話 第一階層・第二階層

「第一階層『バチカル』。守護者クリーク! どっからでもかかってこいやアア!」


「よく吠える犬だ。囲んですり潰せばいいのか?」


 剣を振り回し威嚇するクリークを軽くあしらうグリムゲルデ。


 そこにセクレタリーの声が割り込む。


「各階層の突破条件は守護者が決めま~す! 勝利条件は守護者の気分次第! ただ~し、条件をクリアできなければ東京を手当たり次第に焼いちゃいますよん!」


「俺の条件は単純明快、誰でもいいからタイマン張れや! 残りは邪魔だから通っていいからよお!」


 階層の守護者という名目ではあるが、クリークは残りの九人を素通りさせるらしい。


「馬鹿が相手で助かったな。こいつと戦いたい者はいるか?」


「おう! 馬鹿は馬鹿でも俺は馬鹿強いぜ!」


「馬鹿強いと聞いちゃあ黙ってられねえ! グリムゲルデの妹御よ、さすればこの俺が出るとしよう! 文字通り腕が鳴るってもんよ! フハハッ!」


 鋼鉄の義手を鳴らしながらベルリヒンゲンが一歩前に出た。


(確かにクリークは侮れない死神だが、姉上から借り受けた強力なカードをここで切るべきなのか……?)


 グリムゲルデは思案するが、その間にクリークが状況を進めてしまう。


「いいなあ! じゃあ俺も指名ってのをさせてもらおうか! その義手のテメエ、お前とやり合うのも面白そうだ! 名を名乗れ!」


「おうとも! “強奪騎士”ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン! 推して参る!」


 グリムゲルデの命令を待たずにベルリヒンゲンが義手で剣を抜いた。


 すかさずクリークが大剣を振りかざして彼に飛び掛かる。


「妹御よお! お前らを巻き込んじゃかなわん! さっさと先に進んでくれや!」


「進むぞ。ぼやぼやしてると本当に巻き込まれるぞ。クリークではなくベルリヒンゲンの方にな」


 残る九人はタワーマンションのエントランスに向かう。


 そこに潜むのは第二階層の守護者たち。雪辱を果たさんとするカタストロフィだった。


「しゃらあッ!」


 ベルリヒンゲンに飛び掛かるまでクリークの立っていた場所は、その踏み込みで放射状にひび割れている。


 その勢いで繰り出される一撃を難なく受け止めるベルリヒンゲン。


「戦争、戦争、戦争だ! 俺の生まれ故郷! 俺の存在意義!」


 クリークは子どもが棒切れを振り回すようなめちゃくちゃな太刀筋でベルリヒンゲンに斬りかかる。


 だがその斬撃の一つ一つが捌き損なえば即、命を失う強烈な一撃だ。


 対するベルリヒンゲンも防戦一方ではない。義手で掴んだ剣で斬撃を受け流しながら鋼鉄の義手に霊力を集中させる。


 クリークは動物的な直感で危機を感知し跳躍する。


「避けたつもりかよ! 小僧!」


 ベルリヒンゲンの右腕から空気が弾ける音がした。


 衝撃波で周囲の空気が震える。義手が音の速度を超えクリークの腹を貫く。


 墜落するクリーク。だが血反吐を吐きながらその顔は笑っていた。


 ベルリヒンゲンが仕込んだワイヤーを巻き戻すと、義手が弧を描きながら彼の腕へと戻る。


 そして立ち上がろうとするクリークを見て目を疑った。


「嘘だろ? 殺したつもりだったぜ」


「嘘だろ? 腹に穴が開いただけだぜ。手がもげたって咥えた剣で戦うんだよ。足に仕込んだナイフで戦うんだよ。それが俺の戦争だ。戦争なんだああッハハハ!」


 笑いながら大穴の開いた身体を剣で支え、クリークが立ち上がる。


 そして剣を杖のように突きながらベルリヒンゲンに向かい歩く。


 背骨ごと貫かれ、自力で歩けないのだ。ベルリヒンゲンはクリークの生命力に改めて驚く。


「ったく人の体ってのは不便だよなあ!」


 クリークが街灯に向かい剣を数度振る。そしてもう一方の手でたった今切り出した鉄棒を掴む。


 彼は剣を自らの脇腹に突き刺し、横から一直線に貫いた。


 身体の支えを作ると鉄棒を霊力強化しベルリヒンゲンに向ける。


「おうし! 安定した。やるぜええ!」


「クリーク。お前さん狂ってるぜ」


 鉄棒を振りかざし駆け寄ってくるクリークを見て、ベルリヒンゲンは呆れたような笑みを浮かべた。




「第二階層『エーイーリー』。守護者カタストロフィ」


 進み出たリーダーこと不破は、マンションのエントランス入り口に立ちグリムゲルデへ告げた。


「失せろ、人間風情が」


 グリムゲルデがそう言うと、オフィツィアが眼帯を外す。


 かつて防壁越しにコードネーム・シールドを昏倒させた紫色の光を放つ魔眼。


 だが今の不破には効かなかった。


 伯爵によって強化されたシールドによる防壁があるからだ。


 黒いコート、処刑人姿のライヒハートが斬首剣を抜き防壁の破壊を試みる。


 彼は生前、記録上最も多くの人間の命を奪った処刑人だった。


 それ故に人そのものや、人の作り出したものを姿かたちを問わず斬ることができた。


「俺だけじゃない。カタストロフィの全員が前とは違う。試してみるか?」


「勝利条件はなんだ」


 一矢が一歩前に進み出て言う。


 以前戦った際に彼を仕留め損ねた責任があるような気がしたからだ。


「三対三の勝負だ。眼帯男。黒コートの殺し屋。お前らとはここで決着をつける。あとは数合わせで仮面の兵隊。その三人と戦わせろ。俺たちも三人で戦う。俺、アサシン、スナイパー。それで十分だ。レックスの獲物、お前と戦えないのは残念だがな」


 魔眼の将校(オフィツィア)、処刑人ライヒハート、仮面兵隊長アルベールがそれぞれグリムゲルデの方を向き頷く。


「好きにしろ。三人に全員でかかってきても構わんがな」


「いや、遠慮しておこう。どうやら数に頼らないのがこの戦のマナーらしいからな」


 ライヒハートによって防壁が砕かれる。開戦の合図だ。


 不破がオフィツィアに目を合わせないようにエントランスに駆け込む。


 影からのアサシンの奇襲はアルベールによって防がれ、マイスターの複製した数十の自動小銃がスナイパーの能力で一斉に銃撃を開始し、窓ガラスが砕け散る。


 残る六人が急いで次の階層へと向かう。魔術によって至る所に罠がしかけられた第三階層へと。

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