⑨ 雪子の手紙
雪子は二人の姿が見えなくなるまで見送っていた。
「…さてと。私としたことが、せっかく雪村を呼び出したのに、大事なことを依頼するのを忘れちゃったわ。」
まあ、でも二人の仲を取り持つことができてよかったかな、とも思った。
それにここは昭和の時代なんだし、この依頼を封書にして送ってもいいしね。
そして雪子は会議室に戻って、雪村に以下のような手紙を書いた。
拝啓 真田雪村様
本日呼び出した本題を伝え忘れていたので、お手紙いたしました。
実は折り入ってお願いがあります。
私は今後、しばらくこの「昭和」を訪れないようにするので、貴方にこの時空研究所の所長代理を依頼したいのです。
こちらの研究所の副所長は、杉浦鷹志君にお願いしてあるので、解らないことは何でも彼に訊いてください。
因みに、隣の監察局の副所長は酒井弓子さんだから安心してね。
貴方、大学を卒業してすぐの就職先は辞めてしまって、今は実家でのんびりしているのでしょう?
お給料はタップリ出すから、この手紙を受け取ったらすぐ、必ずまたここへいらっしゃい。
私はここでもう一度だけ貴方の顔を見てから、「照和」に帰ります。
必ず来てくださいね。
追伸
弓子さんと末永くお幸せに!
昭和62年10月11日
別時空の貴方の姉 真田雪子




