⑧ 三名の結論
やっぱりこっちの流れが正解だったのかしらね。
雪子はそんな風に考えながら、仲良く並んで帰って行く、雪村と弓子の姿を2階の窓から見送る。
なかなかウソを言えない雪村と、ちょっとしたウソも見抜いてしまう弓子、まあお似合いのカップルよね。
「あっ。」
彼女は思わず声を出してしまった。
正門のすぐ外で、黄色いワンピースを着た女が待ち構えていたのだ。
遠目でも見間違いようがない、それは村田京子だった。
そう言えば、彼女には雪村の所在を探知する能力があるんだった!
「修羅場になるわ。大丈夫かしら。」
そんな雪子の心配をよそに、雪村はつかつかと彼女に近寄って行く。
「やっぱりあなたは彼女を選んだのね。」と京子。
「うん。これが僕の結論だよ。」と雪村。
「まあ、いいわ。最近私の方も、おばあさまが、京都の財閥の息子とお見合いしろって五月蝿くてね。」
「今まで僕のことを、着かず離れず見守ってくれてありがとう。」
「よしてよ。私が好きでやったこと。それにこれからだって、どこからだって見守っているわよ?」
「ありがとう。京子さんは僕の掛け値なしの親友だよ。」
「貴方も私の親友ね。」
「それからアナタ!」
京子は、そこで初めて弓子に声を掛けた。
「私の大事な雪村を守り切れるのよね?」
「大丈夫。私も強くなったの。それに雪村君自身も、前よりずっと強いわ。」
弓子は果敢に答えてみせた。
「…いいでしょう。取りあえずアナタに任せてみるわ。でももし物足りないと感じた時は、いつでも雪村を取り返しに来るから、そのつもりで!」
捨て台詞のようにそう言うと、彼女は踵を返して歩き始めた。
「ああ、でも、結局あの女の言った通りになったのが癪に障るわね。」
歩きながら、小さな声で最後にそう言ったのが聞こえた。
雪村と弓子は、去って行く京子の後ろ姿を、その場でしばらく見送っていた。
「京子さん、強気な言葉を言いながら、最後は涙ぐんでいた。」
「彼女には、小学生のころから色々とよくしてもらった。友人として、たくさんの思い出があるし、彼女にはとても感謝しているんだ。」
「…ホントに私でいいの?」
「今さら何を言ってるんだ。キミがいいんだよ。キミがもう嫌だって言う日が来るまで、絶対離さないからな!」
雪村が心の底から本当のことを言っているのが分かったので、弓子はまた顔を真っ赤にしてしまったのだった。
「ありがとう。これからもよろしくお願いします。」
「こちらこそ!」
そして今度こそ、二人は手を取り合ってその場を後にしたのだった。




