③ わずかな副作用
「それに何だか髪も茶色っぽいし、肌も前より白くなったような…」
鷹志に指摘されたことは、全て的確だった。
自分でも分かっている。まずコレが副作用の一つの現れなのだろう。
何だかスーパーサイヤ人みたいな変化だな。そう思ったら、雪子はまた笑えて来た。この笑い上戸みたいな気分も副作用なのかしら?
そんなことを考えながら彼女は鷹志とともに、2階の会議室に入る。
すると室内では、酒井弓子がコーヒーを煎れて待っていた。
隣のビルで、時空監察局の副局長をやっている彼女まで、心配してわざわざやって来ていたのだ。
「あら、貴女まで。」
雪子が言うのと同時くらいに、弓子も口を開いた。
「大丈夫なんですか?なんか怪しげな薬を使ったって聞きましたけど…。」
「副所長は副局長にどんな説明の仕方をしたのかしら?」
座席に座りながら、雪子はちょっと鷹志をにらんだ。
「いや、得体の知れない物にどんどん手を出す人だなあって…。」
横に座った鷹志は、さして悪びれもしない。
「まあ、そうだけどね。私は昔から、❝火中の栗を拾う❞性格なのよ。」
「ですよね。」
雪子の前に座った弓子までそう言う。
「だって人生、やらずに後悔するより、やって後悔したいじゃない?」
「分かります。私はやらずに後悔してばかり。」
「そんな貴女に朗報です。」
「何ですか?いきなり。」
「この後、雪村をここに呼んであります。貴女も呼び出すつもりだったの。」
「ええっ!?」
「好きなんでしょ?告白しなさい。」
「そんな、いきなり、急に。」
「急じゃあ無いでしょ。だって、ずっと好きだったんだから。」
「そう…ですけど。」
「命短し、恋せよ乙女よ。」
「…それ、大正時代の歌ですよね?」
「この間、ちょっと行ってカジって来たの。まあ事ここに至っては、私には無縁の言葉になっちゃったけど。」
「じゃあ、僕は用済みみたいなので、席を外しますね?」
鷹志が腰を上げて部屋を出る。
「色々ありがとう。心配かけてごめんなさい。」と雪子。
「お二人だって、仲良さげじゃないですか。」と弓子。
すると、それに対して、二人の声がユニゾンになって帰って来た。
「いやいや、ビジネスパートナーだから!!」
雪子が雪村を呼び出したのは本当だった。
確かに弓子とのことも気がかりだったのだが、雪子はもう一つ、確かめておきたいことがあったのだった。




