⑳ 彼の正体の開示
「貴女の推理に、私から補足をいたしましょう。」
サン・ジェルマンが話し出す。
「これから話すことは、私たちのチームが、長年時空を旅した中で観測した事実に、私なりの推測を加えたものです。」
「⋯。」
「ですから、貴女方よりも、経験豊富な年長者の見解として、参考にしていただけたらと思います。」
「⋯いいわ。話してみて。」
「結論から申し上げると、彼、つまり真田雪村の属性は、❝鳳凰❞なのです。」
「えっ?」
「我々の属性は、言うなれば❝人魚由来❞の不老不死。彼もまた不老不死なのですが、そこに至るプロセスが我々とは違うのです。」
「⋯それって?」
「彼はこの昭和の時代の後、平成、令和の時代を経て、85歳の天寿をまっとうして没します。」
「⋯。」
「火葬場で焼かれた彼の遺体は、骨の髄まで完全に灰と化し、それらは全て空気中に飛散しました。」
「⋯。」
「と、同時に、この時間軸からも消えてしまったのです。」
「そんな⋯。」
「私は他の時空の私たちに連絡を取り、その行方を追跡させました。」
「⋯。」
「その結果、元々彼の居なかったあらゆる時間軸に、貴女方が誕生したことを観測したのです。」
「⋯そうか。だから⋯。」
「つまり、貴女方、言わば❝真田雪子群❞は、彼を構成していた灰の一粒一粒だった、という訳なのです。」
「⋯。」
「彼の属性の別名は❝火の鳥❞。炎に焼かれて初めて、その不死身のチカラを発揮できるのです。」
「⋯。」
「⋯そして彼もまた、我々と同様、自然の摂理に逆らう存在なのです。」
「死んだら精神体になり、宇宙のアカシックレコードに接続できる存在になる。」
「⋯。」
「⋯そうして4次元、5次元の世界に行くのが生命の幸せのはずなのに、彼もまた、ソレに抗う存在という訳です。」
「⋯。」
「恐らく貴女は、無意識のうちに彼の欠片を集めて、灰になる前の彼を再構築しようとしていたのでしょうね。」
「⋯。」
「しかし、無数の灰になった彼の全てをかき集めることなど、不可能に等しい⋯お判りになりましたね?」
「⋯それでも私は⋯。」
「もちろん今後どうするかは、貴女の自由です。私の話したことは、先に様々な時間を旅した者からの、老婆心からの忠告だったと、心のどこかに留めておいて下さい。」
「⋯。」
雪子は黙ってしまった。
村田京子もまた、思いがけないタイミングで彼女の❝業❞のようなモノを垣間見てしまったようで、どう声を掛けたら良いのか分からなくなってしまったのだった。




