⑱ 三者面談
「「どういうことかしら?」」
雪子と京子は、ほぼユニゾンのタイミングでサン・ジェルマンに詰め寄った。
「おお、仲のおよろしいことで。」と彼が言う。
「「誰が!」」
すると、またしても二人のユニゾンが聞こえたのだった。
「まあ、とにかくこちらへお掛けになって。貴女もコーヒーでいいですか?」
そう彼に誘われて、しぶしぶ雪子が席に着く。
円卓テーブルの円弧状の、ちょうど正三角形を形作る3点の位置に、等間隔に三名が座った。
「実は貴女の研究所と、こちらのテレビ塔のエレベーターに、少々細工をしましてね……。」雪子に向かってサン・ジェルマンから口を開く。
「照和の貴女の研究所から、このレストランまで、期間限定で直通にしたんですよ。」
「余計なバイパス工事をしてくれたものね。」
雪子は怒っているし、呆れていた。
この男は明らかに、自分を凌駕したチカラを持っている。
最早、そう思わざるを得なかった。
「付け加えると、ここは他の誰からも観測されない、時空の狭間になった場所なのです。ですからここは、京子さんの昭和でもありません。長く時空を旅していると、そういうレアな場所を見つけることもあるから、楽しいですよ。」
「つまりここは、貴方独自の基地ってことね?」
「そうです。その中の一つと言っておきましょう。因みにここの従業員も私の部下です。」
どうやらこのサン・ジェルマンは組織作りに長けているらしい。
単独行動の多い彼の同位体の中では、極めて珍しい存在だな。
そう雪子は思った。
村田京子は彼の説明を聞きながら、先ほどのエレベーター内での違和感の正体に、思い当たった。あの時、時空を超えたのだ。
それにしても、真田雪子までここに連れ出して、一体この男は、私に何をさせようというのだろう?
確か先日の、お見合いの結論を訊きたいのではなかったのか?
「ああ、そうでした。ほったらかしにして申し訳ない。京子さん、私との婚約のお返事はいかがですか?」
「ええっ!?」
声を出したのは雪子だった。
そりゃあそうだ。
そんな話、初耳である。
それに仮にも、他の時間軸では、彼は彼女自身の夫なのだ。
まったく、ナニを考えているんだこの男は?
雪子はいよいよサン・ジェルマンという人物が分からなくなってきた。
京子は、雪子を目の前にしての、この彼の非常識な振る舞いに、正直どうしたものか少しの間迷った。
しかしやはり、用意して来た返事をその場ですることにした。
「先日の貴方からの申し出、謹んで御受けすることに致しました。どうか今後とも、末永くよろしくお願い致します。」
こんな感じに、ワザとらしいくらい丁寧に返事をしてやった。
そして隣の席で驚く雪子の顔を見て、京子は少しだけ愉快な気分になったのだった。




